会議で何かを決める際、出た案がどれも素晴らしくても、1つに決めなければならないことはよくある。そういった場合、自分の意見が選ばれなかった人が非協力的にならないようにする必要がある。『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』の著者で、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長・中島崇学氏は「わかっていますよサイン」をまめに出す必要があると語る。それは一体どのようなものか。本記事では本書の内容をもとに解説していく。(構成:神代裕子)
参加者みんなの納得を得るのが大事
会議では、さまざまな意見が出る。
ただ意見を出し合うだけならいいのだが、その中から1つの案に決めなければならないことも多い。
「おっしゃる通り!」という意見でも、どうにもできないこともあったりする。
そういった場合、意見が通らなかった人が納得できずに会議を終えてしまい、後々非協力的になってしまうことがある。
どうしたら、そのようなケースを避けられるのだろうか?
中島氏は、「合意した時点で納得してもらっておくことが必要」と語る。
意見をほめるのではなく、共感する
中島氏は「あらゆる会議や打ち合わせは、小さなコンセンサス・ビルディングとも言える」という。
そして、「コンセンサス・ビルディングに不可欠なのは相互理解だ」と指摘する。
意見を言った人は、その人なりの思いがあり、考えたことを発言している。
だから、その意見が通らなかったとしてもあなたの気持ちはわかっていますという「わかっていますよサイン」をまめに出すことが大事ということだ。
その際に、「『とても良い提案でした』と言ってはいけない」と中島氏は注意喚起する。
なぜなら、その意見に対して「良い・悪い」の評価をしていることになるからだ。
中島氏が勧めるのは、意見を離れてその人の想いにフォーカスするような声かけだ。
人間は自らの意見を押し通したいのではなく、むしろ自分の想いに共感してくれたチームのために尽くしたい──そんな面があります。(中略)
「私の想いを汲んでくれた」と思ったそのとき、人の心は開きます。(P.234-235)
人間は、「わかってほしい」と思う生き物なのだ。
通らない要求も、その根底にある想いに理解を示す
本書には、中島氏のある体験が書かれている。
中島氏は、会社員時代に大きな会議のファシリテーターを務めていた。グループ会社をたくさん抱える大企業の本社側の立場だったため、各社の代表を集めて本社の方針を伝え、彼らの意見を聞くという会議だったそうだ。
「グループ会社の人たちから出るのは、意見というより苦情が大半だった」と語る中島氏。でも、ある年、どんな意見も受け止めると決心し、言い訳をせずにすべて聞いたという。
このように、中島氏が「わかる」と示し続けたことで、相手も「わかろう」としてくれたそうだ。結果、相互理解が生まれ、問題を解決する策が出てきて、最高のゴールを迎えたのだと当時を振り返る。
会議であっても、人と人とのやり取り
どうにもならない意見を言われたとき、つい司会者は言い訳や相手を諭すようなことを言いがちだ。
しかし、「どうにもならないけれど、あなたが不満に思うのはわかる」「対応できないけど、そう考える理由はちゃんと伝わっている」という姿勢が、相手の気持ちを癒やすのだ。
会議という場であったとしても、人と人との話し合い。そこには感情があり、その人なりの事情やストーリーがある。
そこを踏まえてやり取りしていくことが大事であることがよくわかるエピソードだ。
本書には、ファシリテーターが知っておきたい考え方やテクニックがたくさん紹介されている。どれも、会議の空気や参加者の気持ちを温かくほぐしながら、前向きな意見交換ができるように促すための方法だ。
もし、あなたが会議での進行役を務める上で困っていることがあれば、ぜひ一度本書を手に取ってみてほしい。
きっと、会議の進め方も変わってくるはずだ。