ファシリテーターに向いている人はどんな人だろう。 おそらく、「この人とは本当に話しやすい」と思ってもらえる人だ。『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』の著者で、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長・中島崇学氏は、話しやすい人と思ってもらうポイントとして「好感をもってもらう」「頭がいいと思ってもらう」「味方だと思ってもらう」の3つをあげる。本記事では、会議を進めやすくするために、参加者から「認めてもらえる言葉」を紹介する。(構成:神代裕子)
「話しやすい」と思ってもらうことが第一歩
ファシリテーターは会議を進行させながら、発言を促しつつ、最終的にはその会議のゴールに到達させなければならない。
前に立って、「さあ、話し合ってください」と言えばそうなるわけではないので、なかなか大変な役割だ。
中島氏によると「この人は話しやすい」「この人ならわかってくれる」と思われることが目的を達成するために大事になってくるという。
特に、以下の3つがポイントになるそうだ。
① 好感をもってもらう
② 頭がいいと思ってもらう
③ 味方だと思ってもらう
確かに人は、想像以上に感情に左右される生き物だ。仕事であっても「嫌いだから、協力しない」なんて思う人は少なくない。
しかし、仕事をしていると、人間関係の良し悪しに関わらず一緒にプロジェクトを進めなければならないことがある。なかなかつらい状況だ。
経験がある人もいると思うが、ウマがあわない人や、こちらをよく思っていない人がいる会議で司会をすると、重苦しい空気になりがちだ。そんな雰囲気が影響して、発言してくれる人も少なくなる。
そうならないためにも、中島氏は①の「好感をもってもらう」については、「『好きか嫌いかなら、まぁ好き』を目指そう」と語る。
なぜならば、嫌われてさえいなければ、③の「味方だと思ってもらう」ことができるからだ。
「共感」が味方をつくる
味方になってもらうために必要なキーワードとして、中島氏は「共感」をあげる。
この共感を得るには、2種類の共感があるという。
一つ目は、「感情の共感」だ。例えば、次のようなものだ。
そのとき、大変なプレゼンを経験したことがある人、A社の手強さを知っている人なら、自然にこう応じるでしょう。「そうそうそう! わかりますよ」と。(P.104)
感情の共感の場合は、「わかる!」「ホントそうですよね!」といった感情のこもった言葉ならなんでもいいのが特徴だ。
心から共感したときに、自然と出てくる言葉であれば効果があるという。
共感できない話に共感する方法
一方、いつも相手の発言に共感できるわけではない。その場合はどうしたらいいか。
中島氏は「そのときは『知の共感』を使う」と語る。「それはきっと大変でしょうね」といった共感の仕方だ。
・「想像を絶するぐらいがんばったのでしょうね」
・「お話をうかがっているだけで、思いが伝わってきますね」(P.106)
この「感情の共感」と「知の共感」の2種類の共感を使いこなすことで、味方を増やすことができるというわけだ。
ロジカルな人と思われるコツは「数」の使い方
②の「頭がいいと思ってもらう」も、会議を進めていくうえでは大事な要素だ。
中島氏は「少なくとも、見下げられたり値踏みされたりすると物事が進めにくくなるので、それは避けたい」と語る。
「頭いいな」と思われなくても、「頭悪いな、この人」と思われないことが重要なのだ。
そのために中島氏が勧める方法は、まず「貴重なご意見をたくさんいただきましたので、まとめます」と言わないことだという。
なぜなら、「まとめること」はかなり難易度が高いからだ。上手くまとめられないと、逆効果になってしまう。
では、どうすればいいか。それは「ポイントを数で挙げていく方法」だ。そうすることで、ロジカルに考えられる人と思われて「頭が良さそう」に感じられるのだ。ただし、注意点がある。
確かに、会議を進行させながらそこまで考えるのはなかなか難易度が高い。そこで、中島氏は次のような方法を勧めている。
最初は「まとめます」としか言っていないので、ポイントの数に増減があっても問題ありません。(P.137)
確かに、この方法なら数の力でロジカルに見えるが、きれいにまとめてしまわなくてもいいので上手く話せそうだ。
好感を持たれたら、仕事はずっとしやすくなる
会議の司会に限らず、誰かと仕事を進めていくうえでは、少しでも好感を持たれて、「この人なら大丈夫そうだ」と思ってもらうのは大事なことだ。
自分という存在を認めてもらわなければ、スムーズに物事が進まないことは、少しイメージしてみれば、誰もが納得することだろう。
共感を利用して、「この人は味方だ」と感じてもらい、数を活用して、「頭が良さそうだ」と思ってもらう。
ちょっとしたコツで相手の印象を変えることができるのだから、会議に限らずさまざまなシーンでぜひ試してみてほしい。