オーストリアのユダヤ人家庭に生まれたフランクルは第二次世界大戦下で、ナチスによる強制収容所での生活を体験しました。過酷な環境下で深く考えぬいた末に、悩み苦しむことこそ、人間が人間たるゆえんだと唱えたのです。
さらにフランクルは、この人間の苦悩する性質を能力でさえあると言います。つまり、私たちが抱える否定的な感情を、自分の内側で内面的に保持する能力だということです。それができない人は、否定的な感情をすぐに表に出してしまいます。だから突然キレたりするわけです。
これに対して苦悩することのできる人は、相手の気持ちも考えて、慎重に対処することができるのです。
あなたが恐れる先輩も
何かに苦悩する人間である
フランクルが考える「苦悩」とは、一体どんなものでしょう?それを理解するために、ちょっと変わったババ抜きを体感してもらいます。
通常のババ抜きでは、スペード、ハート、ダイヤ、クラブの各13枚のカードとジョーカーを1枚用意しますが、ここではプレイヤーに内緒で、ジョーカーを何枚か用意します。
そして、プレイヤーそれぞれに、ジョーカー1枚と何枚かのカードを配ります。通常のババ抜きでは、ジョーカーは1枚だけですので、プレイヤー自身は自分だけがジョーカーを持っていると思い込み、不安に陥りますよね。
でも、プレイヤーは「自分がジョーカーを持っている」ことを、ほかのプレイヤーに悟られないように、またほかのプレイヤーに自分の手持ちのジョーカーを引いてもらうために、目線や表情、しぐさに留意し、自然な振る舞いをしようと努めます。
そこで、このジョーカーを苦悩に置き換えてみると、どんな人でも実は見えていないだけで、苦悩を抱えて生きていることが分かります。つまり、あなたが極度に恐れる先輩も、何かに苦悩するひとりの人間なのです。
日ごろから、人はみな何かに悩んでいるのだと思うことができれば、先輩恐怖症も少し軽減されるのではないかと思います。
キツいことを言われたら、「相手はなぜそんなことを言ったのか?」と考えて、相手が苦しんでいること」を想像してみましょう。
悩みへの答えの一例
先輩は「優勝できなかったら、自分のせいだ」と思っている。先輩も責任感の強さゆえ、言葉がきつくなってしまったのかもしれませんね。相手の苦悩に目を向ければ、自分だけが辛いとは思わなくなりますよ。