この夏、メディアの話題を独占したのは衆議院選挙のことと酒井法子の行動履歴についてだったが、その影で大きな“異変”が起きていた。その変化は多くの女性には見えていたが、ほとんどの男性は気づいてなかったと思う。それは、「女性誌」で起きていたからだ。
この夏、女性誌に起きた
大きな異変とは?
『フィガロジャポン』2009年8月20日号 特集「私なりの社会貢献 いま世界のためにできること」【阪急コミュニケーションズ刊】 |
誰が仕掛けたわけでもないのに、同時多発的に同じ現象が起こることをブームと呼ぶならば、この夏、女性誌は明らかに“社会貢献ブーム”だった。多くの女性誌、特に高級グラビア誌で、社会貢献をテーマにした特集が組まれた。特筆すべきは「フィガロジャポン」と「STORY」で、「フィガロジャポン」8月20日号では「私なりの社会貢献~いま世界のためにできること。」、「STORY」9月号では「世界のためにオシャレで貢献!」と題した大特集が組まれ、表紙でも大きくフィーチャーされていた。
女性誌の表紙に「世界のために~」などというフレーズがデカデカと載る時代が来ることなど筆者は想像もしていなかったが、この夏、それが現実になったのである。しかも、2つのメジャー誌で同時に起こったのだ。
その他、「25ans(ヴァンサンカン)」9月号では「2009年チャリティ・リポート」と題して8ページに渡る特集が組まれ、「BAILA(バイラ)」8月号でも「私たちにもできる!!今日から始める社会貢献」特集が組まれた。8月28日発売の「エル・ジャポン」10月号の「世界を動かすキーパーソン図鑑300」特集の中では「社会に働きかけるセレブ」16名がフィーチャーされ、ハリウッド・セレブやトップ・モデル、音楽アーティストに混じり、2名の社会起業家が紹介されている。「VERY」7月号でも「VERY世代の社会貢献~母の視点で、みつけたこと」という特集が掲載されている。まさに、軒並みという感じで女性誌は今、社会貢献ブームなのである。
『VERY』2009年7月号 特集「VERY世代の社会貢献~母の視点で、みつけたこと」(光文社刊) |
時代とともに読者意識も変化。
今は「カッコイイ」がキーワード?
ここ1~2年、女性誌の中で社会貢献をテーマとした記事や特集が増えているのは、筆者も実感していた。中でも衝撃を受けたのは、「VERY」2008年7月号の旅行特集だった。
なにしろあの「VERY」である。「シロガネーゼ」という言葉を生み出した、セレブ主婦御用達の高級女性誌。ある意味、最も先鋭的な資本主義文化のプロパガンダ雑誌。そんなイメージの「VERY」が旅行特集の冒頭で紹介していたのが「アフリカの蚊帳工場」だった。
いまだマラリアなどの伝染病に苦しむアフリカの人々にとって、蚊との戦いはまさに生死に関わる問題だ。蚊帳は伝染病から身を守る最も有効な武器のひとつ。だから、国連やNGOなどは蚊帳の普及活動を推し進める。日本の住友化学も、効果が持続する優れた蚊帳を開発しアフリカの人々に大絶賛されている。「VERY」に登場したのも、この住友化学が技術協力している蚊帳工場だった。
「アフリカでは1枚たった5ドルの蚊帳が手に入れられないために、たくさんの幼い子供たちが死んでいるんですよ」
女性誌らしい美しいビジュアルと共に、住友化学社員のそんな言葉が伝えられる。アフリカが置かれた状況と蚊帳の重要性を端的に伝える良い記事ではあったのだが、そんな話が「VERY」のような雑誌で読める時代が来るとは!! 世の中、変わった――そう実感させてくれた特集だった。しかし、いつからこんなに変わったのだろう? 「VERY」編集長の今尾朝子氏はこう語る。
「シロガネーゼから10年経っていますからね。読者の意識も変わっています。これまでの読者は、高収入の男性と結婚したらそこが上がり。しかし今の読者は、結婚して子どもが生まれ家族ができたところがスタート地点。そう考える前向きな読者が増えています。家の中のことだけでなく、仕事やボランティアなどを通して社会と関わる、そんなライフスタイルがカッコイイと考える。それが今のVERY読者なんです」