その1本が脱毛症リスクに!?喫煙と頭髪の不自由な関係Photo:PIXTA

 喫煙は男性型脱毛症(AGA)のリスクか否か。この問題は長らく議論されてきたが、一つ解答が出たようだ。

 カナダの研究グループは、AGAの発症および重症度と、喫煙レベルの関係を明らかにするため、「tabaco」「hair loss(脱毛)」「androgenetic alopecia(男性型脱毛症)」などのキーワードで医学文献のデータベースを検索し、複数の試験のデータを用いてメタ解析を行った。

 AGAの重症度は、「生え際が後退しているが他人にはわからない状態~生え際がはっきりM字形になり、髪の量が減った、あるいは頭頂部が薄くなっている状態」を『軽症』、「生え際が後退し、頭頂部がO形に薄くなっている~生え際が頭頂部とつながっている、もしくは側頭部にのみ髪が残っている状態」を『重症』とした。

 さて、AGAの「軽症」「重症」と喫煙状況との関連を分析した結果、喫煙歴がない男性と比較し、喫煙経験者がAGAを発症する確率は、1.82倍と有意に高かった。

 またAGAの進行度との関連では、喫煙歴がある男性は「軽症」から「重症」へと移行する──、つまり髪が後退する早さが、非喫煙者よりも1.3倍有意に早いことが示されたのである。

 1日の喫煙本数との関連では、1日10本以上喫煙する男性は、10本未満と比較し、AGAの発症率がほぼ倍増した。

 一方、1日20本以上のヘビースモーカーでは、AGAの進行スピードとの関連は認められなかった。研究者は「喫煙本数との関係は明らかではないが、少なくとも1日10本以上の喫煙歴はAGAの発症と進行のリスクになると考えられる」としている。

 肝心の「禁煙すればAGAの進行は止まるか?」については、残念ながら解析されていない。

 一般的に、禁煙によって長年吸い込んできた「健康リスク」を払拭するには、少なくとも数年、非喫煙者レベルまで回復するには10~15年という時間が必要だ。

 そこで「もう遅い」と開き直るのか、少しでも進行リスクを減らす努力をするのかは、あなた次第である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)