薄毛が気になってきても「安易な自己判断は危険」と乾重樹医師は指摘する。加齢による薄毛と思っていても実は「他の病気から起きているもの」である場合も。多くの人が誤解している「治療薬にまつわる嘘」と副作用とは。また、海外で主流となっている薬と入手できる場所、最新育毛療法まで一挙公開する。(ジャーナリスト 笹井恵里子)
安易な自己判断は危険
見た目は似ていても治療薬は異なる
新年度を迎える今、“見た目”が気になる人もいるだろう。その中でも特に髪の毛は、人知れず悩む人も多いかもしれない。そこで今回、薄毛になるメカニズムから最新治療法、副作用までお届けする。
日本人の毛髪は個人差はあるものの、頭部全体で10万本ほどといわれる。一本一本の髪の毛は、成長期(2~6年)から退行期(2週間)、休止期(3カ月)を経て再び成長期に戻るというサイクルを繰り返す。休止期になると毛根の深さが浅くなり、新しい髪の毛に押し出されるようにして髪の毛が抜け落ちていく。平均して1日数十本程度の抜け毛くらいではあまり気にする必要はない。
だが、明らかに薄くなってきたと感じたら――。思い浮かべるのは、男性の中年期以降に発症する「男性型脱毛症(AGA=androgenetic alopecia)」だろう。
しかし、「安易な自己判断は危険」と、大阪大学医学部特任教授で、日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」の作成に携わった乾重樹医師(心斎橋いぬい皮フ科院長)が指摘する。
「ひとくちに脱毛症といっても、ちまたでいわれているようなイコール男性型脱毛症、AGAというわけではなく、さまざまなタイプがあるんです。ですから、まずは皮膚科を受診して、『診断』を受けることが非常に重要。見た目は似ていても治療薬が異なるんです」