コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間で1000人以上の転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏。これまでコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。「コンサルティング業界への転職を考えている」という人はもちろん、「キャリアチェンジを考えたい」さらに「コンサルタントのスキルが気になる」という人にも役立つ。マッキンゼー、BCG、ベインなどの「経営戦略系ファーム」そしてアクセンチュア、デロイト、PwCなどの「総合系ファーム」対策の全てが詰まった完全保存版の一冊だ。この連載では、書籍から一部を抜粋・編集して掲載する。

1000人のコンサル転職を支援したエージェントが教える「退職の伝え方」、三流は「焦る」二流は「理由を説明する」では一流は?Photo: Adobe Stock

会社に残る人に「理解してもらおう」としてはいけない

 日系企業にいるなら退職交渉の進め方には王道があります。それは「謝り倒す」です。

 決して、自分が辞める理由を「理解してもらおう」とか、辞めることを「認めてもらおう」とか考えてはいけません。「謝り倒して諦めてもらう」が正解です。一見身も蓋もない感じがしますが、もちろんちゃんとした理由があります。

 退職交渉で気をつける必要があるのは、日系企業にいる人です。外資系企業に勤めている人の場合は、辞めることに理解を示してくれることが多く、あまり問題になりません。

 日系企業には、まだ「終身雇用・年功序列」「ムラ社会」が色濃く残っています。ムラ社会では、ムラの住人は、そのムラに忠誠を誓いムラのために尽くします。ところが、会社を辞めようとしている人は、「ムラを出よう」としているわけです。これはもう会社に残る人から見ると「裏切り者」以外の何物でもありません。つまり、辞める人と残る人は「そもそも価値観が異なる」わけです。辞める理由をいくら説明しても「理解してもらえない」という前提に立ったほうがいいです。ゆえに、ひたすら「謝り倒す」ことで最終的に「諦めてもらう」と、結果的には円満に辞めることができます。

 一方、「なぜ謝る必要があるのか?」という見方もあります。辞めることは憲法で認められていますので(職業選択の自由)、何人たりとも辞めることを止めることはできません。また近年は、企業のコンプライアンス遵守の高まりや、生産性向上のために雇用の流動性を高めることが議論されており、辞めることに寛容な社会になってきています。

 もし「なぜ謝る必要があるのか?」とモヤモヤするようであれば、辞めることで発生する引き継ぎや調整など、色々な人に負担をかけてしまうことに対して謝っていると考えてみてください。目的は「円満退社」ですので、そのためにやれることを徹底すると「立つ鳥跡を濁さず」、スムーズに退職することができます。

 退職交渉の結果、実際の入社日がオファーレター記載の入社日から後ろにズレてしまうことになっても、全く問題ありません。焦って会社と揉めてしまうのが、一番よくないパターンです。ファーム側も円満に辞めてきて欲しいと思っていますので、安心してください。

(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです)