人気の就職先・転職先として注目されるコンサルティングファーム。一流のファームでは、どんな採用基準で人を見ているのか?『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』の著者であり、コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏に、その傾向の変化を聞いた(書籍から一部を抜粋・編集して掲載しています)。

晴れてコンサルティングファームに入社しても、それはスタートでしかありません。「一人前のコンサルタントになる」ことが目的ですから、まずは入社後コンサルタントとしてしっかりと「立ち上がる」ことが重要です。
コンサルタントの立ち上がりのイメージは、入社してから2〜3ヵ月ぐらいで仕事の内容が「少し掴めて」きて、半年ぐらいで「少し自信がついて」きて、1年ぐらいたつと「基本的なコンサルワークは一人前としてできる」ようになります。
他の業界に比べ、圧倒的に成長スピードが速いです。
長年多くの転職者を支援してきて、ファームのカルチャーやコンサルタントとしての動き方などを知らなかったばかりに、入社後スムーズに立ち上がれずに苦労する人をたくさん見てきました。個人の能力的な問題ではなく、コンサルタントの動き方や仕事に対する取り組み姿勢が、事業会社でのやり方とは大きく異なることが原因です。せっかく面接を突破した高い能力を持っているにもかかわらず、十分にその力を発揮できていないという状況に陥ってしまうのは、とてももったいないです。
特に注意が必要なのは、カルチャーがコンサルとは大きく異なる日系大企業(官公庁・自治体含む)からファームに転職する人です。
繰り返しになりますが、コンサル業界のスピードは圧倒的です。「このギャップに気づくのに1~2ヵ月かかってしまいました……」という感じでは、貴重な立ち上がりの時期を有効に活用することができません。
私はこのような悲劇をなるべく防ぐため、内定後、そして入社後も担当した求職者の人たちと度々連絡を取り、問題や困ったことがないかを確認するようにしています。恐れる必要はありませんが、何がこれまでの環境と違うのかをしっかり認識して、よいスタートを切ってください。
「立ち上がり」で最も大事なのは、コンサルティングファームのカルチャーになじみ、活用することです。コンサルティングファームは、外資系・日系は関係なく、とてもオープンなカルチャーです。ここでのオープンとは、同僚や先輩、上司との間に壁がなく、仕事を行ううえで自由なコミュニケーションができるという意味です。ムラ社会かつタテ割りになりがちな、日系企業のカルチャーとは大きく異なり、社内でのネットワーキングが可能です。
ファームがこのようなカルチャーを共通して持つ理由は、コンサルタントは一人ひとりがプロフェッショナルだからです。プロフェッショナルが同じ目的の下に集まっているのがファームであり、基本的にプロジェクトベースで仕事をしていますので、コンサルタントは組織に属しているという感覚があまりありません。意識しているのは、「自分をいかにしてプロフェッショナルとして高められるか」「より高い付加価値を提供できるか」です。そのためには、色々なコンサルタントと仕事を一緒にして知識や考え方を獲得し、経験やスキルを積んだほうがいいわけです。そのためにも、社内でのネットワークが重要になります。
事業会社の場合は、組織に配属されると(ムラの一員になると)、自然と自分のことを知ってもらえて、他の社員のことも知ることができます。その組織での仕事も自然と覚えていくでしょう。しかし、もし他の組織の社員から質問されたり仕事を頼まれたりすると、自分たちの領分ではないので(他のムラのことなので)、壁を作りがちです。
入社したら、同じプロジェクトのメンバーはもちろん、他のコンサルタントにも積極的に声をかけて、ネットワークを拡げていってください。この「ネットワーキング」がコンサルタントの魅力であり醍醐味でもあります。
そこで、悩みや行き詰まっていることを話してみてもいいです。誰もが以前は新人ですから、同じような悩みを抱えていたことを知ったり、意外なところから解決の糸口が得られたりもします。結果、立ち上がりのサポートを得られるだけでなく、コンサルタントとしてのアセットを築くことにもなります。