2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はキーエンス、ファナックなどの「製造用機器・システム」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
FAの雄・キーエンスが
「3年ぶり減益」の衝撃
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製造用機器・システム業界4社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(4社いずれも23年10~12月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・キーエンス
増収率:10.4%(四半期の売上高2611億円)
・ファナック
増収率:マイナス10.1%(四半期の売上高1978億円)
・SMC
増収率:マイナス8.2%(四半期の売上高1891億円)
・マキタ
増収率:マイナス4.2%(四半期の売上収益1809億円)
製造用機器・システム業界4社の四半期増収率は、キーエンスが2桁増収となった一方で、他の3社は減収に沈んだ。
これらの数値だけを見ると、今回分析対象とした4社の決算はキーエンスの「独り勝ち」であり、他社はその後塵(こうじん)を拝しているように思えるかもしれない。
だが第3四半期累計の決算を見てみると、また違った構図が見えてくる。
国内屈指のFA(ファクトリーオートメーション)関連機器メーカーであり、合理性を徹底的に追求した営業体制を敷いているはずのキーエンスが、実は「3年ぶりの減益」に沈んでいるのだ。
また、上記の増収率からもうかがえる通り、キーエンスと双璧をなすFA関連機器メーカーとして知られるファナックも苦戦。詳しい数字は後述するが、営業利益が前年同期比27.0%減、純利益が同24.2%減と大幅減益に陥っていた。
FA機器の「2強」に何が起きているのか。次ページでは、各社の増収率の推移を紹介するとともに、この2社の業績について詳しく解説する。