平均年収2000万円超、営業利益率50%、時価総額5位――。最強企業キーエンスで「社内の営業成績ナンバーワン」の実績を持つOBは、商談中に顧客とどんな会話をしていたのか。その中で繰り出される「究極の質問」とは――。ダイヤモンド・オンラインが配信している「学びの動画」の特集『キーエンス流 営業・企画・戦略の強化書』(全20回)の内容を基に、その答えを解き明かしていく(元の動画はこちら)。
「どうしたらご採用いただけますか?」
「究極の質問」を臆せずぶつける
「今日お持ちしたこの商品を、どうしたらご採用いただけますか?」
自社を訪れた営業マンが、そんな「ストレートすぎる質問」を繰り出してきたら、多くのビジネスパーソンは面食らってしまうかもしれない。
だがキーエンスOBで、在職中に「社内の営業成績ナンバーワン」を複数回勝ち取った実績を持つ杉谷卓宏氏は、あえて商談でこうした「究極の質問」を投じていたという。
杉谷氏は1992年にキーエンスに入社し、機種責任者やアジアオセアニア地区の営業マネージャなどを歴任した人物だ。退職後は豊田通商を経て、産業用ロボットの販売・レンタル事業などを手掛ける企業「シンプリーロボット」を設立。代表取締役を務めている。
そして杉谷氏の古巣であるキーエンスは、FA(ファクトリーオートメーション)関連機器の大手メーカーであり、測定器や画像処理機器、センサーといったFA用製品を手掛けている。
キーエンスの強みは、コストやマージンを抑えつつ、合理性を徹底的に追求した営業体制を敷いていることだ。こうした仕組みによってキーエンスは、日本企業の中では圧倒的に高い「約50%」の売上高営業利益率を継続的にたたき出している。
そして平均年収は、2279万円(2023年3月期実績)と高年収企業ランキング上位の常連で、国内における時価総額ランキングでも5位(23年11月末時点)につけている。
そんなキーエンスでトップセールスとして活躍していた杉谷氏が、同社で学んだのは「聞く営業」だという。
営業担当者に求められる対人スキルといえば、商品の魅力をアピールする「トーク力」、顧客のニーズに応じた商材を売り込む「提案力」、場を和ませて関係性を深める「雑談力」などが重要だとされる。だがよく考えてみると、これらのスキルは「営業側が会話の主導権を握っている」ことを前提としている。
一方、キーエンスでは「聞く」ことを重視している。会話の主導権は、必ずしも営業側が握っている必要はない。「質問力」を鍛え、相手の話を引き出すことが求められる。
その一環で、杉谷氏は冒頭で述べた「究極の質問」を投げかけていくわけだが、一体どんな布石を打ってから切り出すのだろうか。