アンパンマンの主題歌が「何のために生きるか」を問いかける理由やなせたかし氏が作詞したアニメ『アンパンマン』の主題歌『アンパンマンのマーチ』の一節「なんのために生まれて なにをして生きるのか」は子ども向け作品の歌詞ながら、大人になっても考えさせられる言葉だ Photo:SANKEI
*本記事は本の要約サイト flier(フライヤー)からの転載です。

おすすめポイント

「なんのために生まれて なにをして生きるのか」

 言わずと知れた、アニメ『アンパンマン』の主題歌『アンパンマンのマーチ』の一節だ。子ども向け作品の歌詞ながら、大人になっても考えさせられる言葉である。この歌詞は『アンパンマン』シリーズの作者であるやなせたかし氏の作である。本書はやなせ氏のエッセイをまとめたものだ。読んでみると、やなせ氏の仕事にかける想いや姿勢がうかがえる。

 やなせ氏は子ども向けだからと内容のレベルを下げることはしないという。大人というのは「子どものなれの果て」であり、本質的に大人と子どもは変わらないというのがやなせ氏の考えだ。だから、子どもに「なんのために生まれて なにをして生きるのか」と問う。その場で意味がわからずともよい。それは子どもの心に深く染み込んでいくものだ。だからこそ、子ども向けにかく大人の責任は重大なのだという。子どもへの敬意と仕事への責任感が垣間見えるやなせ氏の生き方には学ぶべき点が多い。

『詩とメルヘン』の編集長も務めたやなせ氏の言葉は、ひとつひとつが美しい。すごいスピードで進む世の中で、つい結果を急いでしまう私たちの心にも、その言葉は染み込んでいく。現代を生きる大人にこそ、「愛と勇気と冒険」が必要なのかもしれない。やなせ氏のやわらかく温かい言葉をじっくりと味わってもらいたい。(千葉佳奈美)