小説や歌舞伎の演目などで知られる「伊達騒動」。「独眼竜」伊達政宗で知られる東北地方の名門・伊達家で起こった“お家騒動”だが、この背景をひもとくと意外なことに、日本が明治維新へと“突き進まざるを得なかった実情”が見えてくる。(作家 黒田 涼)
江戸時代の三大お家騒動
「伊達騒動」はなぜ起こったのか?
歌舞伎の演目『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』や、山本周五郎の小説『樅ノ木は残った』などで知られる伊達騒動は、江戸時代の三大お家騒動の一つとされる。
歌舞伎や小説に登場する、幼い藩主を毒殺から守るため、我が子を身代わりに死なせた乳母・政岡は架空の人物だが、藩主の毒殺未遂事件は本当にあったらしい。
大老・酒井忠清邸での凄惨な斬り合いはもちろん史実で、江戸時代の権力闘争は恐ろしい、などとどこか違う世界の物語のように感じるが、実はこの事件、現代日本経済の発展にまでつながる、大きな経済史の歯車の一つなのである。
話は以前、本連載でも書いた伊達政宗の領内大開墾にさかのぼる。