具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
メンタル離職者が多いことを隠さず、「人の気持ち」に目を向けて対話する
多くの企業で繁忙期となる年度末を終えると、こらえていた辛い気持ちが爆発してメンタル休職が続出します。
この時、絶対にやってはいけないことは「犯人探し」をすることです。
メンタル離職が出ると、「結局、誰のせいなのか?」と考えがちですが、特定の誰かのせいにしないというのが基本です。
犯人探しをすると職場が暗い雰囲気になっていき、残るメンバーのメンタルにとってもいいことがありません。
ビジネスの世界では問題が起こった場合、その原因を突き止めて解決の方法を考えるのが常道ですが、メンタル離職については必ずしも解決につながらないのが現実です。
なぜなら、それは「人の気持ち」の問題であって技術的なアプローチで解決するものではないからです。業務におけるコストダウンや、効率化などとはワケが違うのです。
実際の事例で、次のようなものがあります。
メンタル離職が多い職場で今後どうしたらいいのかという話し合いがありました。
陰では「〇〇さんのせいだろう」「この職場はヤバい」といった噂話が絶えないのに、正式な話し合いになるとなかなか意見が出ません。
その中で、若いメンバーが立ち上がってこう言ったのです。
その発言にみんなびっくりしましたが、そこから対話がはじまりました。
意外に思われるかもしれませんが、この職場ではメンタルが原因で離職する社員にも花束を渡して送り出そう、と話がまとまりました。
実際にそうしたところ、「誰それのせいでこうなったのか?」というような噂が立つことがなくなりました。
花束をもらった離職者は職場へのお礼を述べ、会社で楽しかったことなどについてボソッと喋ったりして辞めていきました。
そうしたら、それで終わるんです。
結果的にその職場では、メンタル離職自体が減っていきました。
若手社員の勇気ある発言がきっかけでしたが、この職場では対話によって「人の気持ち」に着目しあたたかく見送るという方法に至りました。それによって、職場メンバーの気持ちは変わったのです。
「人の気持ち」に着目したアプローチをするのが、職場の雰囲気を改善する第一歩なのではないでしょうか。
(取材・文 間杉俊彦)