具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
【お悩み】毎年のようにやってくる、部下との人事面談。活躍を期待していたエース級社員がいきなり異動を申し出てくることもありそうです。上司である自分自身に不満があるのか、部署の方針に不満があるのか。大切に育てた部下の異動希望をどのようにとらえればいいのか、組織開発の専門家に聞きました。
【回答】部下が異動を希望するのは、管理職の落ち度とは言えない
改まった場で実施しなければならない人事面談などは、管理職にとって非常にストレスがかかります。部下の働きぶりを評価し、言いにくいことを伝えるなんて、本当はやりたくありませんよね。
「異動したい」という申し出は、管理職が言われたくないことの一つ。そういうことを言われるかもしれない、という怖さを感じながら管理職はその場に臨むものです。
人事部からは部下が異動や退職を希望した場合に備えて対応マニュアルが送られて来たりする。でも、そんなことをやっている時間はないというのが管理職の本音でしょう。
まず、部下が「異動したい」と思う理由は、すべてが管理職によるマネジメント不足が原因なのでしょうか。
そんなことはないはずです。会社の構造から居づらくなったのかもしれませんし、個人的な事情も考えられます。
「異動したい」という希望はあなたへの不満から言われたのではありません。
ただし、「異動したい」と言ってくるまで部下の状態に気づいていなかった、ということには学びがあるかもしれません。
日本企業の管理職の多くは業績目標とかノルマなどに否応なく関心が向かいがちで、部下の様子にまで気を配る余裕がないことも現実でしょう。
部下の気持ちに気がつかなかったという点については、管理職である自分を「俯瞰的に見る」ということが有効かもしれません。
あたりまえだと思っている自分の物事の見方が、あたりまえではないかもしれない、と気づくための訓練をするのです。
そうすることで、見落としていた部下からのサインを思い出すことがあるかもしれません。
異動を希望した部下は「裏切り者」ではない
また、自身や部署への不満が噴出することも覚悟して「どうして異動したいの?」と聞くことも大切です。
それまでの関係性にもよりますが、なぜ異動を希望せざるを得なかったのかを話したいと思っているはずです。
部下の本心を聞くための問いかけが、あなたにとっても変化のきっかけになるかもしれないのです。
これは私自身の経験ですが、社内公募に手を挙げて異動することが決まったとき、上司に「お前には裏切られた」と言われたことがあります。当然、これまで一緒に働いてきた上司に「裏切り者」と言われて、大きなショックを受けました。
本当は、次にやりたい業務があったから自分自身のキャリアのために、それまで居た部署から異動することを希望したのです。
今はもう、「裏切り者」なんて言われる時代ではないですよね。
あなた自身、そのことはわかっているはずなのではないでしょうか。
(取材・文 間杉俊彦)