【マラコミシュバカ(ウクライナ)】ユーリー・トレティアコフ氏が重要書類を探すため、廃虚と化した村役場になんとか入り込んだのは、最近のある朝のことだった。同氏はロシアが占領していた村落マラコミシュバカの村長で、探していたのは電気料金の支払いを記録した古い台帳だ。  雪が解ければ、地雷除去隊が道の地雷を一掃して、エンジニアが送電線の修理を始められる。かつて繁栄していたこの農村を復活させる最後のチャンスかもしれない。  「電気がなければ村は死ぬ」。60歳のトレティアコフ氏はそう話した。  ロシア軍がこの地域を去ってからしばらくたつ。