ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

意見の合わない人とは議論しない、誘いを断られても気にしない、大事な交渉ごとはなるべく自らが親しんだ場所で行う……。社会生活で大いに役に立つ“対人関係のライフハック”を、ビジネス心理学の第一人者が提言する。※本稿は内藤誼人『振り回されない練習 「自分のペース」をしっかり守るための50のヒント』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

人間は自分の意見と
一致するものしか受けつけない

 自分の意見と違う人に出会ったとき、私たちはその人の意見を変えようとしがちです。あの手この手を使いながら議論して、自分の意見を受け入れるように相手を説得しようと試みるのです。

 けれども、人の意見や信念というものは、そう簡単に変わるものではありません。

 私たちは、自分の意見と一致するものしか受けつけない傾向にあります。

 これを心理学では「一致効果」と呼んでいます。

 ハーバード大学のキャス・サンスティーンは、「気候変動は人間が引き起こしたものだ」と信じている人は、「平均気温の上昇は、以前に想定されていたほどでもない」という文章を読ませても、その内容を受け入れないことを明らかにしました。

 もうひとつ別の研究もご紹介しましょう。

 ドイツにあるマールブルク大学のピーター・ナウロスは、テレビゲームをする習慣がある人に、「テレビゲームは、人間の暴力性を高める」という記事を読んでもらったのですが、やはりというか、その内容には反対し、受け入れることはありませんでした。

 私たちが受け入れるのは、基本的に自分の意見に一致するものだけ。

 自分の意見と一致しないからといって、相手と議論するのはやめましょう。議論になりそうになったら、さっさと勝負の土俵から降りてしまうことです。

「なるほど、キミのような考えもあるのだね」とさらりとかわしておいたほうが、その人との関係も悪くなりませんし、自分も疲れずにすみます。

 たとえどんなに正当性のある根拠や証拠を示すことができるとしても、議論は避けましょう。逆に相手が感情的に反対してきて、そもそも議論が成り立たないという不毛な事態に陥りがちだからです。

『朝まで生テレビ!』という討論番組を見ていても、お互いが感情をあらわにしてなじりあう場面をよく見かけます。自分の意見をコロリと変え相手に納得するシーンはほとんど見たことがありません。それくらい人間というのは頑固な生き物ですので、最初から議論などしないほうがいいということを覚えておきましょう。

 もしだれかと議論になりそうになったら、適当なところでうまく切り上げ、話題をうまく変えてしまうのもおすすめです。