現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。

【医者が教える】「炭水化物ぬき」や「肉を食べない」など極端な食事法の注意点Photo: Adobe Stock

「極端な食事法」にこだわりすぎてはいけない

 身体の面白いところは、人それぞれであって、常に変化しているという点だ。

 ケトジェニックダイエットヴィーガン食で体調が著しく改善した人の個人的な体験談は数多くある。

だが、こうした人たちは、これらの食事法で痩せたり栄養欠乏状態になったりした後、よりバランスのとれた食事法に切り替えて健康をさらに改善している。

 何かうまくいかなくなったら、試しに食事法を変えてみることをためらってはいけない。健康のダイナミックな性質に食の定説は通用しない。

 動物性食品でも穀物・豆類全般でも、主要な食品群を排除する食事法を採用する場合は、ときどき検査を受けることが大事だ。栄養の欠乏やバランスの乱れが見つかるかもしれない。

 植物性食品だけを摂っていて、オメガ3脂肪酸とビタミンB12をはじめとする複数のビタミンとミネラルの欠乏に陥った後、結局動物性食品を摂る食事に戻った人たちを私はたくさん知っている。

 経過を記録して、必要に応じて食べ物やサプリメントを調整すればビタミンとミネラルの欠乏に陥らずに済む。

 だが、そもそも最初から植物性食品も動物性食品もまんべんなく摂る食事をしていれば、もっと簡単に必要な栄養素をすべて摂取できるのは間違いない!

 一方、ケトジェニックダイエット実践者の中には、最初はうまくいって余分な体重を落とせたものの、やがて代謝の柔軟性が失われ炭水化物を摂ると必ず急激な血糖値スパイクが起きるようになった人もいる。

 こうした人たちは結局、炭水化物を摂る食生活に戻り、長期にわたってケトジェニックダイエットを実践していたときよりも体調が改善している。

 徹底したヴィーガン食や肉食、ケトジェニックダイエットは、そのルールが一貫した食習慣の実践を後押しし、短期的には効果が上がる可能性がある。

 しかし、こうした極端な食事法は、長期的にはそれほど身体に良いとは言えないかもしれない。

 身体を正しい状態に戻すために、一時的にヴィーガン食やケトジェニックダイエットを実践する必要があるならばそれはかまわないが、柔軟な姿勢は保つべきだ。

 あなたの身体がその食事法にうまく反応できなくなり、いまのやり方を変える必要があれば、いつまでも同じ食事法にこだわらないほうがいい。

(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)