――逆にやってはいけないことはありますか?

 短期的な経済動向に動揺して売ってしまうことです。連載第1回でもお話しした通り、短期的な下落があっても経済はそれ以上に成長していく傾向があります。動揺せず、5年以上はしっかり運用したいところです。

 また複利効果の恩恵を受けるためにも、長期間積み立てを続けることが鉄則です。前回も説明しましたが複利効果とは、分配金を再投資することで得られる利息効果のことで、利益分を元本に組み込むことで資産を雪だるま式に大きくしていくことができます。

 例えば、毎月5万円を積み立て利回り5%で運用した場合、5年後には資産は約341万円(運用益は約41万円)、20年後には約2064万円(運用益は864万円)にまで膨れ上がります。運用次第では、50代から積み立てを始めても、70代で2000万円以上の資産を形成することができるわけですから、一時的に相場が下がったからといって売ってしまうのではなく、どっしり構えてできるだけ長く積み立てを続けていくようにしましょう。

投資に慣れてきたら、成長投資枠も活用してよいのでしょうか?

――将来的には、さまざまな商品に投資できる成長投資枠も活用したいと思うのですが、先生はどう思いますか?

 投資初心者の場合、まず優先すべきなのはつみたて投資枠ですが、それなりに投資の知識が付いてきたのであれば、成長投資枠の利用も始めることをお勧めします。

 新NISAでは、二つの枠が別勘定なので、つみたて投資枠を上限まで積み立てつつ、成長投資枠でも年間240万円まで投資することが可能です。そのため、つみたて投資枠の枠いっぱいまで積み立ててもなお余裕資金のある場合には、成長投資枠を活用すればよいわけです

 成長投資枠は、つみたて投資枠と比べて広範囲の商品を購入することが可能で、つみたて投資枠では購入できない株式やREITなども購入できます。ただし、一般的に株式は投資信託と比べるとハイリスクな商品となるため、新NISAで堅実に王道の資産形成を目指す上では不適です。

 特に、50代や60代から積み立て投資をする場合は、数十年の投資期間を取ることは難しく、リスクを取ったチャレンジングな投資は避けた方が賢明です。そのため、成長投資枠でも、まずは安全性の高いつみたて投資枠の対象の商品を選ぶことをお勧めします

 つみたて投資枠対象の投資信託やETFなら、長期投資に適したローコストな商品ばかりなので、投資初心者でも安心ですよね。二つの枠をフル活用すれば、最大年間360万円まで積み立てが可能となるため、わざわざ株式のようなハイリスクな商品に手を出さなくても、十分に老後資産を形成することは可能ですよ。

【NISAにおける王道投資術】
50代、60代といえども、一括投資はNG。つみたて投資枠を利用して、毎月、コツコツと積み立てを実践。10年以上などの投資期間を持って、複利の恩恵を受ける

NISAで利用する商品は「全世界株式型投資信託」か「米国株式型投資信託」の2択。50代、60代は基本「全世界型」1本でもOK

✔資金に余裕があれば、つみたて投資枠の上限を超えて月10万円以上の積み立てをするもよし。その場合、成長投資枠を利用することになるが、投資する商品は、つみたて投資枠の対象投資信託から選ぶとリスクが小さい

今回は、50代、60代の投資初心者の方に向けて、新NISAの基本的な仕組みとその活用方法について解説しました。4月26日公開の​連載第3回では、もう一つのお得な投資非課税制度「 iDeCo(個人型確定拠出年金)」について深掘りしていきます。

【ミドル&シニアのための“超王道”投資術】第2回 横山先生、知識ゼロですが新NISAのこと詳しく教えてください

 【監修者Profile】

横山光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、マイエフピー代表
「消・浪・投®」の家計管理と投資を両輪に資産形成を目指す提案が好評。家族マネー会議も評判。現場にこだわるファイナンシャルプランナーで相談件数は2万6000件超。シリーズ累計95万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』など著作181冊、メディア出演多数。