駅のホーム写真はイメージです Photo:PIXTA

ウケる商売やバズる宣伝は、人間の欲望を刺激することが大事。そう聞くと、ただちにポルノ(性欲)やグルメ(食欲)が頭に浮かぶ諸氏は、正直者だ。人間のゆがんだグロテスクな欲望をフルに利用した、テレビ東京の超人気企画から学ぼう。※本稿は、最後まで読むとその意味がわかる、従来のビジネス書の枠にとらわれない驚きの内容が話題の上出遼平『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

どんな商売の入口も
欲望によって開かれる

 人間は欲望によって動きます。欲望によって動かされていると言ってもいいでしょう。だから、私たちは欲望を利用します。人間の欲望を真摯に見つめないで成立する商売は基本的にはありません。

 人間には様々な欲望があります。例えばポルノと言われるものは性欲に訴求し、人を強く惹きつけます。同様に、食欲を刺激するものは一般的に「グルメ○○」として親しまれ、いつの時代も衰えることのない不動の人気ジャンルとして君臨しています。人間の欲求を直接的に刺激する、オモテのグルメとウラのポルノ、といったところでしょうか。

 では、私たちはポルノかグルメに頼らざるを得ないのか、と言えばそんなことはありません。人間には三大欲求以外にも様々な欲望があるのです。(また、ポルノやグルメの要素を上手く、それとなく利用するという方法もあります)。魅力的なコンテンツ制作、コミュニケーション設計の出発点は、偏に欲望の発見にかかっているとも言えるのです。

他人のお宅にあがりこんで
奥さんの姿を見てみたい

 自分の話ばかりするのも憚られるので、会社員時代の直属の先輩の話をしたいと思います。ヒロキさんと私が呼んでいるこの先輩は、「深夜の駅前で最終列車を逃した人に声をかけ、タクシー代を出す代わりに家までついて行かせてもらう」という常軌を逸した番組を考案、実現し、局の超人気企画に成長させた後、色々あって私の一年後に退社した人物です。

 番組もさることながら、人として常識の範疇に片足さえもつっこめていないような人なのですが、この「深夜の駅前で最終列車を逃した人に声をかけ、タクシー代を出す代わりに家までついて行かせてもらう」番組の企画的鮮やかさがあまりにもずば抜けているので、どうしてもこの話をしたいのです。

 なぜこんな番組を考えついたのか、と問えば、彼は「人妻を見たかったから」と答えます。彼は深夜の人妻が見たくて仕方がなかった。それで、まず彼は『奥さん見せてください』という企画書を書き上げます。お気づきの通り、端的に性欲によって書かれた企画書です。この企画書の後半には「シンプルかつ淫靡な人妻カタログが誕生します」と元気いっぱい記載されています。正気の沙汰とは思えません。当然この企画書は編成部によって一蹴されました。