<正解>
 7回

「一度に5頭走れるなら、25頭を5グループに分けて、それぞれのグループで最速だった5頭をまた競わせればいい。だから答えは6回だ」と、考える人も多いかもしれません。
 たしかに正攻法のように思えますが……。じつは、そこには盲点があります。

候補から外れる馬を見つけていく

 この問題で鍵になるのが、「最速を選ぶ」のではなく「候補から外れる馬を見つけていく」という思考です。

「25頭を5グループに分けてレースをおこなう」ところまでは正解です。
 これで5グループ内における1位~5位の馬がわかります。
 グループ名を仮にA,B,C,D,Eとすると、25頭はそれぞれ、以下のとおりに示せます。
 ※数字は「そのグループ内での順位」を表す

 ・A1 A2 A3 A4 A5
 ・B1 B2 B3 B4 B5
 ・C1 C2 C3 C4 C5
 ・D1 D2 D3 D4 D5
 ・E1 E2 E3 E4 E5

 これで、5回のレースが終了しました。各順位はご覧のとおりです。
 この時点で、各グループの4位および5位は「25頭のなかのトップ3頭」にはなれません。
 なぜなら、同じグループにすでに「自分より速い3頭」がいるためです。
 そのため、10頭が候補から外れます。

1位が3位に負けることもある

 各グループの4位と5位が候補から外れ、残った馬は以下の15頭。

 ・A1 A2 A3
 ・B1 B2 B3
 ・C1 C2 C3
 ・D1 D2 D3
 ・E1 E2 E3

 ここからが少しやっかいです。
 1位の馬だけでレースをして上位3頭を選べばいいように思えます。
 しかし、そこで勝ち残った3頭が、全25頭のなかでのトップ3にはならない場合があります。
 それは……

 速い馬が特定のグループに偏っていた場合です。

 この可能性を見落としてはいけません。
 たとえば、Aグループにトップ3が固まっている場合。
 このとき「全体のトップ3」はA1, A2, A3です。
 そのためA~Eの1位のみでレースをおこなうと、

 A2とA3がじつは全体の2位と3位という事実に気づけません。

 かといって、いちいち「1位同士でレース」「2位同士でレース」「3位同士でレース」などとやっていたらレース数が増えていくだけ。
 何か、もっといい方法はないのでしょうか?

いったん1位同士を競わせる

 たったひとつの冴えたやり方があります。
 6レース目はとりあえず、各グループ1位の馬による競走をおこないます。
 そして順位が  

 1位:A 1
 2位:B 1
 3位:C 1
 4位:D 1
 5位:E 1

 になったと仮定します。
 このとき、少なくともD1とE1は「全体のトップ3」には入れないことが確定します。
 と同時に、D1,E1より遅い、D,Eグループの2位と3位も「全体のトップ3」には入れないことが判明します。
 これで、6頭が候補から外れます。

レースせずともわかる「脱落者」

 この時点で残った候補は以下の9頭です。

 A 1 A 2 A 3
 B 1 B 2 B 3
 C 1 C 2 C 3

 そして、よく考えたら、C2とC3も「全体のトップ3頭」には入れません。
 C1,B1,A1という、自分よりも速い馬が現時点で3頭もいるからです。

 同様に、B3にもチャンスはありません。
 B2,B1,A1という、自分よりも確実に速い馬が3頭いるためです。

 レースするまでもなく、3頭が候補から外れました。

 以上を考えると、6レース終了時点で残る候補は以下の6頭です。

 ・A 1 A 2 A 3
 ・B 1 B 2
 ・C 1

 そしてじつはもう一頭、レースをせずとも結果がわかる馬がいます。
 それはA1です。
 A1はAグループで1位であり、他グループ1位の馬とのレースでも1位になっています。
 つまりA1は全25頭で最速の馬です。

 なので7レース目は、A1を除く5頭での競走になります。
 そしてA1、および7レース目の1位と2位が「全25頭のトップ3」となります。

「思考」のまとめ

 やや難しいですが、短絡的に答えを求めようとしない姿勢が重要でした。
 実際におこなわれるトーナメントの試合でも、1回戦で敗れたからといって、その対戦選手が優勝した場合、1回戦で敗れた選手の実力が低かったとは限りませんよね。
 実力1位の選手と2位の選手が1回戦でぶつかる場合を考えてもらうと、イメージしやすいと思います。
 その可能性に気づけると、「6回」という誤答は防げます。効率を求めながらも、正確性の大切さを教えてくれる問題でした。

 ・部分的な1位が、全体の1位とは限らない
 ・効率を重視せず、あらゆる可能性に目を向けることが大切

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。