微笑みあう男女写真はイメージです Photo:PIXTA

ストレートのウイスキーをこよなく愛する辛党かつ、辛口の経済評論家として人気を博した山崎元氏は、惜しまれつつも2024年1月、食道癌で世を去った。生前の同氏は、息子の人生のささやかな指針となるよう原稿を遺していた。そこで語られる、「幸福」とは?※本稿は、山崎 元『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』(Gakken)の一部を抜粋・編集したものです。

お金なのか?自由なのか?
幸福の決定要素は、実は一つだけ

 たいていの人間は幸せでありたいと願う。では、幸せを感じる「要素」、あるいは「尺度」は何か。多くの先人がこの問題を考えている。

 父はこの問題に暫定的な結論を得た。人の幸福感は殆ど100%が「自分が承認されているという感覚」(「自己承認感」としておこう)でできている。そのように思う。

 現実には、たとえば衣食住のコスト・ゼロという訳にはいかないから「豊かさ・お金」が少々必要かもしれないが、要素としては些末だ。また、「健康」は別格かもしれないが、除外する。

 お金と自由とは緩やかに交換可能だが、それで幸福か?

「自由度+豊かさ」、「富+名声」、「自由度+豊かさ+人間関係」、「自己決定範囲の大きさ+良い人間関係+社会貢献」、「自由度+豊かさ+モテ具合」、などなどいろいろな組み合わせを考えてみたが、まとめてみた時にいずれも切れ味を欠いた。

 少し眺めてみよう。

 たとえば、自分にできること、すなわち自由の範囲が大きいことは一般に幸福だとされている。一方、「好きなこと」で稼いで豊かさを得ることは簡単ではない。

 むしろ、好きではないことを我慢して稼ぐことが、豊かさへの近道になる場合が多い。