第21回コラムでは、トヨタ自動車などのデータを元に「損益デッドクロス」を紹介した。第23回コラムではソニー・富士通・NECの決算データを用いて、損益デッドクロスから経済学の企業行動論へと展開していった。そして第24回コラムは、「西の横綱」と呼ばれたパナソニックを取り上げた。
話題の連続性からすれば今回は、かつて「東の横綱」と呼ばれた日立(日立製作所)を取り上げるのが自然な流れだろう。ところが、今度ばかりは、お手上げだ。分析資料をいくら眺めても、どう説明していいのか、わからない。日立の業績が低迷しているのはもちろんだが、何によりも同社には、切り込むにあたっての“話題性”がないのである。
例えば新聞や経済雑誌などを読んでいると、ソニーはゲーム、富士通はスーパーコンピュータ、東芝は原子力、パナソニックは三洋買収などの記事が踊る。各社ともそれに絞った経営戦略を展開しているわけではないが、「この会社には、この話題」がついて回っているのは確かだ。
では、日立には何があるのか。過去3か月ほどのスクラップ記事を読み返しても「これこそ、日立だ!」という話題が見つからなかった。日立マクセルなど完全子会社化の話題などがあったようだが、身内でかためた「草食系M&A」では、長期低迷から脱する推進力にはなりそうもない。
そういうときは足もとを見るに限る。家電製品から話題を見つけようとして我が家を見回したところ、パナソニック製とシャープ製が多いことに改めて驚いた。
日立が東芝・三菱に抜かれた!?
総合電機メーカーで起きた下克上
とりあえず今回は(←こういう表現は極めて非礼である点をご容赦いただくとして)、第6回コラムで取り上げた東芝に、日立と三菱電機を合わせた総合電機メーカーを一括りにして取り上げ、経済不況後における各社の戦略について分析していきたい。なお、細かな業界定義を述べるならば、パナソニックとシャープは総合「家電」メーカーである。
まず、総合電機メーカー3社の時価総額を比較してみよう。