時価総額で世界上位を占めるテック企業は、驚くほど若い起業家たちが寮の部屋やガレージ、飲食店などを拠点にして立ち上げたものだ。創業時にマイクロソフトのビル・ゲイツ氏は19歳、アップルのスティーブ・ジョブズ氏は21歳だった。アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏とエヌビディアのジェンスン・フアン氏は30歳だった。だが、世界で最もかけがえがない価値を持つと言ってもよい企業を、張忠謀(モリス・チャン)氏が立ち上げたのは55歳のときだった。かつて彼ほど年を重ねた人物が、台湾積体電路製造(TSMC)ほど価値のある企業を一から始めたことはなかった。半導体受託製造の世界最大手であるTSMCは、コンピューターや電話、自動車、人工知能(AI)システム、われわれの日常生活の一部と化した電子機器の多くに使われる必要不可欠な部品を製造している。