二流のリーダーは部下に「ついていきたい」と思わせたい。では、一流は何を考える?
そう語るのは、これまで4000社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/種岡 健)
個人か、組織か
「ついていきたい」と思われたい。その感情こそが、諸悪の根源です。
人は、「メリットを感じたとき」に利益についていくものです。
「いい人なんだけど、この人についていっても成長できなそうだな……」
そう思われてしまうと、途端に部下たちは離れていきます。
リーダーがすべきことは、部下たちを「組織の利益」に向かわせることです。
大きなマンモスの肉が「組織の利益」であることを認識させ、そこから「個人の利益」が発生する。それが正しい順番です。
そんな世の中の仕組みに則って、リーダーの言動を正していきましょう。
「タテマエ」を本気にするな
人間は何を基準に動くのでしょうか。
行動のきっかけはなんでしょうか。
「楽しいから動く」「気持ちがいいから動く」「安心するから動く」……。いろいろな行動のきっかけがあると思います。
ただ、突きつめると、行動のきっかけは1つだけです。
それは、「自分に利益があるかどうか」です。
人は自分に利益があると判断したときに動きます。意識的にも無意識的にも、利益があるかどうかを基準にしています。
人間とは、そもそもそういう生き物です。
利益があれば動く。それだけです。
逆に、利益が減ることには「恐怖」を感じます。利益が減ると思えば、減らない方向へと行動をとるはずです。
「言行一致していない」が大前提
「リーダーについていきたいかどうか」も、すべて「自分にとって利益があるかどうか」で決まります。
部下がそのリーダーの下にいることが自分にとって「利益」だと判断すれば、「ついていきたい」となります。
「利益にならない」と思えば、いい人であっても、ついていきません。
本当についていきたいと思われるリーダーは、「利益をもたらしてくれる人」です。
仕事に厳しくても、「数年後には成長できるはずだ」と、利益を感じさせることが大事です。
部下は、友達や恋人を探しに会社に来ているわけではありません。
ビジネスをしに、稼ぐために来ているのです。
もしかしたら、部下は口では、
「楽しく働ければ、それだけで満足です」
「ラクに働ければ、成長しなくてもいいです」
と言うかもしれません。
しかし、その言葉を真に受けてしまっては、リーダー失格です。
本当に楽しいことをやりたいだけなのであれば、それはプライベートで友達や恋人と遊んで楽しんでいるはずです。
「ラクに働けるほうがいい」と本心で思っているだけなのであれば、責任の少ないフリーターなどの働き方をしているはずです。
つまり、どちらもリーダーが考えるべき問題ではありません。
それに、部下も本心では「楽しいだけじゃダメ」「ラクなだけじゃダメ」とわかっているはずです。
人は、つねに言行一致しているわけではありません。
本音と建前があります。
リーダーの仮面も、まさに建前を利用したマネジメント方法です。
組織に所属している以上、本心では「成長意欲があること」を前提にリーダーはマネジメントし、部下を「使えない社畜」にしないようにすべきです。
それが一流のリーダーです。
仮面をかぶり、「利益が何か」を見極めましょう。
(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年4月現在、約4000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』のシリーズ(いずれもダイヤモンド社)がある。