「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、2度のGOOD DESIGN受賞歴を持つデザイナーの井谷育宏氏。井谷氏は「株式会社&A」の社長でありながら、FIDIAのCCO(最高クリエイティブ責任者)も兼務し、質の高いクリエイティブで信頼を得ている。今回は本書に登場した井谷氏に「起業成功術と自身の仕事術」について聞いた。
デザイナーとして必要な能力とは?
――井谷さんは自身のデザイン会社を経営する傍ら、FIDIAのCCO(最高クリエイティブ責任者)として活躍。さらにGOOD DESIGN賞を2度受賞するなど、デザイナーとして華々しい実績を残されています。デザイナーとして成功できた要因を教えていただけますか?
井谷育宏(以下、井谷):僕は29歳のときに起業しました。その前はある会社に誘われ、上海で化粧品のディスプレイの仕事をしていました。
当時の僕は自信満々で「俺のデザインならなんでもいけるぞ!」というテンションで中国に乗り込みました。
しかし、中国での仕事はうまくいかず、初めて挫折を味わいました。
集客について革命的な1冊の本
井谷:そんなとき、僕はたまたま1冊の本に出会います。
それが神田昌典さんの『あなたの会社が90日で儲かる!』いうショッキングピンクの本なんです。
――それは『スタートアップ芸人』の中で森社長がニート時代に読んだ本ですね。
井谷:はい。僕にとってもこの本がターニングポイントでした。
デザインと集客はまったく違うと思い知ったんです。
デザインだけではなかなか集客できない。
でも、神田さんの本にはどうやって集客したらいいか、これでもかとわかりやすく書いてあったので、上海で試してみました。
たとえば、デザイン事務所で広告を出すことになったとき、デザイナーはカッコいいものばかりつくってしまうのですが、これだとどんなサービスなのか、顧客に伝わらない。
そこでこの本をヒントに、これまでとはまったく違った奇抜なやり方をしてみたら、お客さんの反応がガラッと変わってきたんです。
結果、集客もうまくいき始め、軌道に乗っていきました。
――どれぐらいのスパンで成果が出たのですか?
井谷:3か月くらいでした。
実験したらすぐお客さんから反応があったので、僕自身、すごく腑に落ちた。こういうやり方をすればいいのか! と。
それが面白くて、神田さんの他の本を読んだり、新たに戦略の勉強をし始めました。
そして、もうこれはやるしかないぞ、自分でやろう! と思い、上海から日本に戻って起業したんです。
たった一人、和歌山で起業した理由
井谷:僕は和歌山県出身ですが、デザインで勝負するなら大阪か東京など大都市でと思っていました。
でも、上海での仕事がしんどかったときに親や友達が支えてくれたので、地元に貢献したいなと思い始めたんです。
それで思い切って和歌山で起業しました。
もちろんコネもお金もない状況でしたが、自分一人ならなんとかなるだろうという感じでしたね。
起業で成功するたった1つのポイント
――起業で成功するポイントは何でしょう?
井谷:本書にもありましたが、企画書や事業計画書を最初から完璧につくるより、徐々につくり上げていくほうがいいです。
僕も起業当時から、とにかく早く動いたほうがいいと考え、実践していました。
僕の強みはデザインの中でも3Dソフトが使えながら幅広くできるところでした。
まず、ライバルをリサーチしたところ、地方だからか「クリエイターになりたいけどあきらめています」という社会人が意外に多いことに気づきました。
僕はそこに着目し、デザインスクールをやってみることにしました。
でも、スクール用に場所を借りたらお金がかかる。だから、こちらから出張しようと。
――個人宅へ出張するのですか? 家庭教師のデザイナー版みたいな感じ?
井谷:そうです。「土日でも夜でも出張します」とアピールしました。
こうすることで、場所代というデメリットをメリットに変えました。
分析から生まれた圧倒的な差別化
井谷:あと、デザインの仕事は、Mac(PC)が必要だったり、イラストレーターやフォトショップなど各種ソフトにも割とお金かかるので、デザイナーになるのはハードルが高いと思われるのかなと思いました。
そこで中古のMacを買い、「無料で貸し出します」というサービスもつけたんです。
さらに、フリーペーパーに広告を出し、「資料請求→商談」という流れをつくったら大きな反響がありました。
――すごい発想と行動力ですね。中古のMacは何台用意したんですか?
井谷:中古のMacは成約するたびに買いました(笑)。
成約料金は、当時はたしか月3万円くらいだったかな。それで何か月か経ったらペイできる計算でやっていました。
とにかく、圧倒的な差別化ができるよう工夫しました。
ただ、今思えばやりすぎではとも感じますが(笑)。
――最初だからこそやりすぎくらいの差別化で、どんどんお客さんに利用してもらった感じですかね?
井谷:そうですね。