水素を用いるFCEVと2.5LHEVを用意
走りは快適&スポーティ、高い実力の持ち主

 パワートレーンは2種類用意。ひとつはクラウン初となるFCEVだ。MIRAIのシステムを水平展開しシステム出力は182ps/300Nmを発揮。水素タンク容量は141Lで約5.6kgの水素を貯蔵可能。1充填で820kmの航続距離を実現している。

 FCEVの走りは電動車の魅力が明確。静かで滑らか、そして力強さを実感する。パフォーマンスはモーター車ならではのレスポンスの良さとピッチングを抑えた車両姿勢が相まって、車両重量2000kgを感じさせない。思いのほかスポーティだ。静粛性は高剛性ボディに加えて入念な遮音・防音対策により、初代セルシオの感動が蘇るレベルにある。

 もうひとつはHEVだ。2.5L+モーターに有段ギア(4速AT)を組み合わせたマルチステージハイブリッドを採用。エンジン最高出力を使用できる速度域を下げ(約140→約43km/h)、高速走行時は回転数を抑える制御の採用で、2.5Lながら動力性能と燃費性能(WLTCモード:18km/L)を両立させている。

 走らせるとクロスオーバーやスポーツよりも電動車感が強く、ダイレクトな味わい。いわゆるメリハリが感じられる。ただし、EV→HEV切り替え時に一瞬感じるもたつき、エンジン始動時に“ブルン”と伝わる振動、さらには回生時のATのシフトショックなど、ややスムーズさに欠けるのは残念。静粛性もFCEVと比べると劣る。とはいえANC(アクティブノイズコントロール)の効果もあり、エンジンを回しても音はさほど気にならない。静粛性のレベルは、トヨタHEVの中では最上位にある。

 フットワークはFCEV、HEVともにハイレベル。FRレイアウトのよさが活きている。ドライバーズカーとしても魅力的だ。クロスオーバーなどと比較して“よりスッキリ”、“よりスムーズ”、“より素直”なコーナリングが可能だ。サスペンションは16代目の中で最もソフトな設定だが、姿勢変化とロールは抑えられ安定したコーナリングを見せる。このあたりは基本性能(低重心/ワイドトレッド/前後重量配分)のよさが大いに効いているはずだ。

 乗り心地は路面へのアタリ、足の動き、ショックの吸収性などすべてにおいて優しい。凹凸を乗員に伝えないという点は、センチュリーを除けばトヨタ車最良、レクサスを含めてもトップに位置する。