最前線で自殺志願者を保護している茂さんの言葉が熱を帯びてきた。話を聞いている私は、口を挟むことができなかった。おもむろに茂さんがタバコを取り出し、ライターで火を付けながら言葉を続けた。

 保険会社も自殺を誘発しているんじゃないかと、私は思います。何千万円もの家を建てて、多額のローンを抱えて、旦那さんが死亡したら、残りのお金は払わんでもいいという特約、「最悪の場合、自殺したら」と言っているようなもんです。車のローンにはこんな特約が付いていないけど、家だけにはピシッと書いてある。

 実際問題、会社をリストラされたあと、妻や子ども、そして両親だけは何とか住まわせたい。そして、「ごめんね……」となるわけです。

いろんな人間のしがらみで
悩んだ果てに自殺を選ぶ

 再び、茂さんのタバコに火が付いた。ゆっくりと吸いながら、私に向かって次のような質問をしてきた。

 自殺する人の大半はどのような精神病者ですか?厚生労働省は何と言っていますか?

筆者 うつやアルコールでしょうか。生活困窮者にも目を向けています。

 やっとそこまでトーンを落としたんです。ここから、バンバン厚生労働省に言いました。うつ病イコール自殺者、自殺者の七割以上がうつ病と、厚労省は言っていました。

 すぐに受診しましょう。心療内科に行きましょう。労働安全衛生法によって、ストレスチェックをしましょう。半年に一回しましょう。今、あなたちょっとうつ気味ですよ。「ちょっと心療内科に行ったら?」とか「精神科に行ったら?」というのが今までの仕事だったんですよ。

 そして、心療内科で診断がついて、たくさんの向精神薬が処方される。

 本人は、うつ病で悩んでいるんじゃないんですよ。いろんな人間のしがらみが理由でうつ病になったんですよ。根本療法をしないといかんのです。病原の根本、仮に親子断絶だったら、「この子どもはこういう病気だから、このような言葉を使うな」といった処方箋を出さないといけないでしょう。