すなわち、相談者が来るのを待っているのではなく、こっちから悩んでいる人がいないかと積極的に探し求めています。

 二点目は、悩み事に関する相談業務の受理体制についてです。「悩み事相談電話」は全国の各所にありますが、多忙のためかほとんど通じません。私たちの団体は、休日や夜間の相談にも対応しているため、電話器に着信歴を記録し、後日、その着信歴を見て相手に問い合わせをしています。

 三点目は、シェルターを所有していることです。自殺を考えて東尋坊へ来ている人は、「自分の住まい」があってもそこには住めず、「親や友達」がいても断絶状態であり、「所持金」はなく、「夢や生きる希望」をなくしており、「この世から消えたい」というひと言です。

 このような人に遭遇したら、「死ななくてもいいんだよ」とか「私が何とかしてあげます」と断言して、その日から生活できる場所を提供しています。

 しかし、この場合に一番大切なことは、抱えている悩み事の解決策と、私たちが支援できる内容を相手にはっきりと明示して、約束したとおりに支援することとなります。

 この場合、相手がもっているレジリエンス(立ち直れる力)を信用してあげるのです。過干渉にならず、個人として尊重した対応をするわけです。そうすると、大半の人は、約1カ月の休養を与えてあげれば、再出発を果たしていきます。

 約2時間、茂さんから東尋坊での取り組みについて教えていただいた。自殺しようかと考えている、最後の一線を越えんばかりとする自殺志願者に対して「死んだらあかん」と言って引き止め、相談に乗るだけではなく、解決するまで熱心に向き合う姿を見ていると、元警察官であり、長年自殺防止に取り組んできた茂さんだからこそできるものと思ってしまった。

 茂さんたちの話によると、この観光商店街は再開発が行われるとのことで、彼らの活動拠点となっているお餅屋「心に響く おろしもち」も対象になっているという。

「今後、どのような形になるか分からない」と話されていたが、東尋坊における最後の「ゲートキーパー」として残って欲しいと強く感じた。