具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
小さなことでいい、「できたこと」を認めるのが大事
早くも4月が終わろうとしています。今年も多くの企業で新入社員が迎え入れられたのではないでしょうか。
そして、新入社員を指導するマネジャーや育成担当者たちの、悩みが始まる季節でもあります。
ある企業のマネジャーは、ため息混じりにこう言います。
「今どきの若手とどう接したらいいか、毎年戸惑います。彼らを支え、成長するためにいろいろ教えてあげたい。でも、なにか強く言うとすぐにパワハラと言われそうで……。どうすればいいんでしょうか?」
なるほど、よくわかります。では、このような状況で、育成を担当する先輩はどのような心構えで新入社員と接するべきなのでしょうか。
例えば、新入社員の育成は「良いところを見つけて認める育成ゲーム」と考えてはいかがでしょうか。育成担当者は、小さなことでいいから、新入社員ができたことを見つける「眼」を持つのです。
若手の中には「みんなの前で褒められると居心地が悪い」と感じるタイプも多いとも言われます。なので、わざとらしく褒めずに「できたね」と認めてあげる。それなら、パワハラにはなりにくいはずです。
この手の話でいつも思い出すのは、元海軍大将だった山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉。この名言は、時代が変わっても色褪せません。このような度量を持って人と接するのがマネジャーの基本なのではないでしょうか。
もちろん、基本的な仕事の所作は、新入社員自身のためにも身につけてもらう必要があります。例えば、電話対応など。「自宅にかかってきた電話に出たことがない」と言う若者も少なくありませんから、ちょっとした難関かもしれません。
新入社員研修で教わった電話対応を、いきなり職場で実践するのはハードルが高いと感じることもあるかもしれません。その場合のオススメの方法は、ロールプレイをしてみて、チームで振り返るというやり方です。
職場でのロールプレイをやって、「○○さん、誰かの電話を受けてたけど、自分でやってみてどうだった?」と尋ね、感想を話してもらいます。そして、周りの新入社員にも「彼の対応を横で聞いていてどうだった?」と尋ねます。個人の欠点をあげつらうのではなく、プロセスをみんなで考えるのがポイントです。
最初はみんな電話に出るのが怖い。でも、これはテクニックではなく「慣れ」の問題です。だから、「どう思った?」というアプローチで感想を共有するのが適切なのかもしれません。
新入社員に「知らないことを教える」のは当然で、そこでは遠慮は不要です。ただ、「どのように言うか」については考えるべきで、教える側もトレーニングが必要なのではないでしょうか?
(取材・文 間杉俊彦)