遺骨写真はイメージです Photo:PIXTA

身元不明者ではなく、親族がいながらもさまざまな事情から引き取り手のいない遺骨、いわゆる「無縁遺骨」が増加しているという。納骨堂や斎場が保管場所を拡張して対応する東京と大阪での無縁遺骨の実情に迫った。本稿は、森下香枝『ルポ 無縁遺骨』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

大阪市の「無縁遺骨」数が過去最多
33年間で10倍以上に急増

 全国の市区町村の中で最も「無縁遺骨」の引き取りが多い大阪市。その南部にある市立瓜破斎場(平野区)は、火葬炉30炉を持つ、全国で2番目の規模を誇る。

 3万平方メートル以上ある広大な敷地内に火葬場、斎場、管理事務所や駐車場などが点在する中、9月下旬の夕方、質素な霊柩車が火葬棟の正面玄関の脇にある入り口に停車した。棺を担ぐのは、葬儀社の男性と火葬場職員の2人だけだった。

 遺体を引き取る人がおらず、行政に委託された葬儀社によって荼毘に付されるという。

 こうした遺体は火葬が混み合う昼間を避け、朝早くか夕方にひっそりと運び込まれるという。

 その後、火葬場の職員らが遺骨を拾い、高さ20センチほどの小さな白いつぼに納める。

 西日本では「部分収骨」が一般的で、できるだけ骨の形を崩さず、頭骨や背骨、骨盤、手足、のど仏など主要な骨だけを拾い、容器に入れ、入りきらない骨(残骨灰)は火葬場に残し、処分するという。

 一方、東日本はほとんどすべての遺骨を骨つぼに入れる、「全収骨」と呼ばれるスタイルが多く、東西で実は骨つぼの大きさ、スタイルなどが異なるのだ。

 大阪では火葬場の裏に「遺骨保管室」と記された倉庫のような殺風景な部屋があった。

 中に入ると、部屋いっぱいに高さ約2メートルのステンレス製のキャビネットが6台ほど置かれ、8段にわかれた30センチ幅の棚に骨つぼが約2千個、ズラリと並んでいた。

 骨つぼには赤字で4桁の整理番号、氏名、火葬日、取り扱い葬儀業者が記された紙のラベルが貼られており、2023年7月と火葬されたばかりの遺骨も多く並んでいた。

 本人の名前や本籍地などが分からない「行旅死亡人」と呼ばれる身元不明者は見当たらない。キャビネットに収められた骨つぼは1年間、ここで保管され、親族など引き取り手が現れるのを待つのだ。

「戸籍調査をして連絡しても遺骨を後で引き取りにくる親族は年に数人ほどです。引き取るつもりがあれば、火葬場のお骨拾いに来ますから……。9割以上は無縁遺骨となります」(大阪市環境局斎場霊園担当)という。