大阪市はこうした引き取り手のない遺骨を瓜破斎場など5カ所にわけて保管、管理し、1~2年を経過したものは阿倍野区にある大阪市営の南霊園にある無縁堂に移して合同埋葬する。

 南霊園の奥にある真新しい慰霊碑の後ろには、かなり年季のはいった仏像が並んでいた。

 毎年9月に「無縁遺骨」の慰霊祭を行い、まだ残暑が残る9月末に南霊園を訪れると、無縁堂に多くの花が供えられ、水を墓石にかける女性の姿もあった。

「無縁堂の地下が満杯になったので新しく拡張しました。これからも無縁遺骨は増えるのではないでしょうか」と前出の斎場霊園担当者は話す。

 実際、大阪市の「無縁遺骨」は年々、増加し、2023年10月現在で過去最多となっていた。毎年8月に集計し、2021年は2767柱、2022年は3149柱、2023年はすでに3408柱となっている。1990年には無縁堂に安置された遺骨は336柱で、33年間で10倍以上になっていた。

 同市の人口動態統計によると、2021年の死亡者は3万1503人なので11人に1人の割合で無縁遺骨となっている計算だ。そして無縁遺骨となった人の9割以上の葬祭費は行政が負担していた。

東京のある納骨堂には
無縁遺骨が約8000柱

 練馬区小竹町にある「江古田斎場」に隣接する聖恩山霊園の納骨堂などには現在、約8000柱の無縁遺骨が保管されている。

 斎場と霊園を運営する東京福祉会は1919年に生活困窮者の葬儀を援助するために設立された社会福祉法人で、葬祭扶助が適用される葬儀を年間2500件(都内全体の3分の1)、施行している。

 岸田首相が豊島区役所を視察した時、大山豊・江古田斎場長が葬祭扶助や無縁遺骨の増加についてレクチャーした。

 葬祭扶助費として支給されるのは約21万円でその範囲で遺体の運搬、保管、棺、火葬、納骨までを行うので、葬儀や通夜をしない火葬場での直葬となる。

「福祉事務所から連絡があり、身寄りのないご遺体を病院や警察までお迎えに行き、火葬日まで保冷室で預かります」と大山斎場長。

 江古田斎場には遺体60体を保存できる巨大な保冷室がある。中を見せてもらうと預かった日付が昨年(2022年)12月と記された遺体があった。身寄りのない人の遺体で警察の要請で今も預かっているという。