20種類もの自動車用ケミカル商品を自社で開発し、廃業のピンチを脱する

――御社の事業内容を教えてください。

岩本 1994年に「姫路カーボディーエステティック」を独立開業してから、自動車ボディーのコーティングや板金塗装、新車・中古車の販売などを手がけてきました。

20種類もの自動車用ケミカル商品を自社で開発し、廃業のピンチを脱する代表取締役・岩本哲尚氏。1967年生まれ。神戸経理コンピュータ専門学校卒業後、関西ベンディング、東元興産を経て、94年4月に個人事業として姫路カーボディーエステティックを開業。2002年に屋号を車工房に変更し、16年12月に法人化。

 近年力を入れているのはコーティング剤をはじめとした自動車用ケミカル商品の自社開発です。コーティングの仕事をする中で欲しい商品が見つからず、それなら自ら開発しようと考えたのです。5~6年前から開発を始め、20種類近いオリジナル商品を生み出しました。

――どんな商品があるのですか?

岩本 最初に開発したのはヘッドライト洗浄・コーティング剤「ピカまも~る」です。

 ポリカーボネート製のヘッドライトは使ううちに黄ばみや汚れが出てきて、光量が不足してきます。すると夜間の安全走行に支障が出ますし、2024年8月からの車検の新基準に通りにくくなるので、洗浄・研磨のニーズが増えるでしょう。

 しかし従来の方法だと一つ1時間超と作業効率が悪く、悩みの種でした。

 その問題を解決したのがピカまも~るです。専用クリーナーをペーパーウエスに染み込ませて拭き、コンパウンドで研磨すると新品同様になります。後は専用コート剤を塗布しから拭きすれば汚れが付きにくくなります。それでいて作業時間は一つ5分程度しかかかりません。

――劇的に作業効率が上がりますね。

岩本 実はこの商品を開発できたのは西兵庫信用金庫さんのおかげなのです。薬品会社との開発が難航したとき、西兵庫信金の営業の方に話したら「当庫の産学連携制度を利用されては?」と勧められ、兵庫県立大学の産学連携・研究推進機構を紹介されました。そのときお会いした専門家の先生に原材料のアドバイスを頂いたことで開発に成功したのです。18年には商材と工法共に特許を取得しました。

――反響はいかがでしたか?

岩本 すごかったですね。展示会に出展すると大手自動車メーカー系商社から引き合いがあり、300店舗以上のディーラーで採用されることが決まりました。

 ところが、そのさなかにコロナ禍に見舞われ、納品が延期になりました。ピカまも~るは消費期限が1年と短いため、廃棄しなければなりません。結果、1億円以上の売り上げが立たなくなりました。

 21年1月に2度目の緊急事態宣言が出たときは、正直、心が折れかけ、廃業も頭をよぎりました。

――厳しい状況ですね……。

 そこからどう立ち直ったのでしょうか?