3人で始めて電子ビームの第一人者に 諦めない精神で新たな商品も開発

──主力事業である電子ビームの溶接とレーザ加工について教えてください。

上野 電子ビーム溶接は、一般的に用いられるアーク溶接の5000倍ものパワーを持った溶接方法です。他の方法では不可能な金属同士の接合や、高精度で気密性の高い溶接を行うことができます。

 レーザ加工では、赤外線や紫外線などのレーザを用いて、高強度接合や超微細な穴開け、溝加工、切断といった加工を行います。

 弊社はいずれの分野でも日本最大規模の設備を有し、国内有数のノウハウを蓄積しています。それが評価され、航空宇宙や自動車、半導体、医療など、多様な分野のお客さまとお取引があります。

──1977年に創業されていますね。

3人で始めて電子ビームの第一人者に 諦めない精神で新たな商品も開発代表取締役社長・上野邦香氏。1970年東京都生まれ。94年中央大学大学院理工学研究科精密工学修了後、三菱電機入社。2001年に退社し、東成エレクトロビーム入社。常務取締役、代表取締役副社長などを経て、12年に代表取締役社長就任。レーザ協会理事、一般社団法人溶接学会高エネルギービーム加工研究委員会幹事などを務める。

上野 創業者である父は、前の勤務先で電子ビーム事業の部長をしていました。しかし、会社との方向性の違いを感じ、2人の部下を引き連れて独立したのです。工場を借り、中古機械1台で始めました。

 小さな会社が電子ビーム事業で独立するのは厳しいことでした。需要が少ないと考えられていたからです。電子ビームの機械は中古でも1台1億円以上するのですが、父の勤務先では機械が週3日・6時間程度しか稼働していなかったようです。これでは採算が取れず、余裕のある大手企業でないとできません。

──そこにあえてチャレンジした、と。

上野 父は「この技術はさまざまな分野で使える。それを広めれば、必ずビジネスは軌道に乗る」と諦めませんでした。航空関連の認定が取れるほどの技術を身に付ければ仕事は自然と増える、と弊社のある多摩エリアの大手企業や研究所に営業をかけ、難易度の高い仕事に取り組みました。

 そうして10年、20年と続けるうちに、企業が困ったときに相談する駆け込み寺のような存在に。口コミで多様な業種の仕事を頂けるようになったのです。そうしてノウハウを蓄積したことで、航空分野の仕事に必要なJIS Q 9100Jを取得でき、さらに仕事が広がりました。