春闘33年ぶり高賃上げでも消費や分配の“好循環”が見えない「4つの理由」Photo:PIXTA

春闘回答第3回集計は5.24%
33年ぶりの高い賃上げは確実だが

 2024年の春闘の賃上げ率は、連合の3回目の集計で5.24%(定期昇給分込み)となった(図表1)。最終的には5%を超える可能性があり、33年ぶりの高い賃上げ率の達成が確実な情勢だ。中央労働委員会の「賃金事情等総合調査」などカバレッジの高い統計によれば、最近の定期昇給分は1.6%程度と考えられ、ベースアップ部分は3%を超えると思われる。

 そうなると、賃金が上昇するため、コスト増加分を販売価格に転嫁できる「賃金と物価の好循環」、あるいは賃金上昇を受けて販売が増加するため企業の利益が増加し、それが今後の賃上げの原資となるという「成長と分配の好循環」につながるとの期待感が高まってくる。

 日本銀行も、賃金と物価の好循環を見通せる状況になったとして、3月金融政策決定会合で17年ぶりに利上げを決め、金融政策の正常化に踏みだした。

 春闘は賃金の伸び率に大きな影響を及ぼし、消費などの回復の可能性が高まっているのは確かだ。だが春闘はあくまで賃金決定の最初の一歩にすぎない。物価や成長につながる好循環が達成されるかどうかは、依然として予断を許さない状況にあるといえる。