圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題のビジネス書『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の著者・森武司氏から「僕に足りないものをみんな持っている」と語られたのがFIDIA(フィディア)No.2で、Luvir Consulting(ルヴィアコンサルティング)CEO中川裕貴氏だ。森氏の「今まで出会った中で一番優秀な人を紹介してほしい」との頼みに応え、何人もの飛びぬけて優秀な人材をFIDIAへ紹介してきた人物でもある。「それほど優秀な人物を何人も紹介することができた理由」とは? 今回も中川氏に話を聞いた。(構成:陽月よつか)

「最後はなぜか優秀な人材に恵まれる人」が大切にしている1つのことPhoto: Adobe Stock

「今まで出会った中で一番優秀な人」の勧誘方法とは?

――中川さんはFIDIAへ「今まで出会った中で一番優秀な人」を紹介したそうですが、どんなふうに勧誘したのでしょうか?

中川裕貴(以下、中川):森さんには僕の知っている優秀な人を何人も紹介しているんですが、最初に紹介したのは中嶋(現・FIDIAのCFO)です。
中嶋は僕の高校の同級生です。
2人ともサッカー部で仲も良く、高校3年間を一緒に過ごした、気心も知れている友達です。
中嶋は、僕の高校時代の友達の中で一番勉強していない印象でした。
高3になり、クラスメートがみんな単語帳片手に勉強している時期にも、休み時間は体育館にラグビーボールを持っていき、ずっとラグビーをしていた変わり者です。大学受験前に、本当にラグビーばかりやっているから、「中嶋、大学行く気あんの?」と本気で思っていたんです。
そうしたら、するっと京都大学に現役合格ですよ。

――すごいですね! 天才肌という感じでしょうか?

中川:要領がよすぎるタイプです。性格が悪くて要領がいい(笑)。
そこから中嶋は、京大を出て、京都銀行に入り、そのまま10年ぐらいバンカー生活をしていました。
彼は早くに結婚して家も購入していて、あまりリスクを取るタイプではなかったので、そのまま京都銀行で出世していくと思っていました。

それがひょんなことから、僕らの会社の事業をちょっとだけ手伝ってもらうことになった。きっかけは、温泉でした。
その頃ちょうど中嶋と一緒に温泉に行き、「最近調子はどう? 仕事はどんな感じ?」と話始めたんです。
別に勧誘とかはまったく考えてなく、ただの雑談レベルの話です。
そうしたら、当時森さんがテレビに出ていたこともあり、中嶋のほうがFIDIA(当時の社名はSuprieve Holdings)のHPをチェックしてくれていたんです。
「今の会社ってこういう状況じゃないの?」
と、中嶋のほうから興味を持って話してくれた。

そのうちに「こんなに会社の組織体系が複雑で、お金のやり取りは大丈夫?」「どこにいくらあるかとか、ちゃんとわかってんの?」という具体的な話をしてきた。僕らの会社の穴を鋭く見抜くんです。
いろいろ話していたら、ふっと中嶋の顔つきが改まって、「あのさ、実は俺、ちょっと転職を考えていて。スプリーブ(当時)に、俺、チャンスあるかな」と言ったんです。
「いやいやあるも何もドンピシャでしょ!」となり、速攻で森さんに連絡した。「僕の高校の同級生で、京都大学行って京都銀行に入った友達がいます。ちょっと一度お会いできませんか?」と。
でも、当時の森さんは反応は薄かった。「バンカーかあ…」という感じで(笑)。

紹介しようとしたら……?
予想外の心配と予想以上の意気投合

――森さんはなぜ反応が薄かったんでしょう?

中川:僕も森さんに「なんでそんな反応薄いんですか?」と聞いてみた。
そうしたら、「京都銀行のバンカーに、ベンチャーのCFOを頼むのってどうなのかな? うちの社風に合うのかな……うちが求めるCFO像はバンカーじゃない気がする……」と迷っていたんです。
森さんの中には、ベンチャー企業と銀行員は相性が合うのか? と思っていたようでした。
ベンチャーのよさである自由なところと、銀行員のよさであるきちんとしたところがそれぞれ打ち消し合うのでは? と懸念していたのです。

でも、「とりあえず一回会ってみてください」と京都で引き合わせたら、それまでの姿がウソみたいに、会ってすぐに2人で話し込み始めた。僕をそっちのけで、2人でお金の話をたくさんしていました(笑)。それでそのまま、「じゃあ、お願いします」と決まったんです。

――すごくすんなりですね!

中川:そうですね。今でも森さんから、「中川の最大の功績は中嶋を連れてきたこと」と言われます(笑)。
実は僕も本当にそう思ってるんです。
そのときは、会社に今いくらお金があって、これからいくらお金が必要で、半年後・1年後にはどのくらいのキャッシュポジションになっているかなど、財務面をしっかりわかっている人がいなかった。そこをカバーする人が入ってくれたことは、会社にとって本当に大きかったのです。

優秀で尊敬できる相手だからこそ、
紹介できる関係性を築いていた

――紹介する側としては、「今まで出会った中で一番優秀な人を紹介しよう」と思って紹介したわけではなかったんですね。

中川:そうですね。ただ、中嶋は高校で一番優秀だと思った人だったのは間違いないです。
それと、僕は岡田さん(現・Luvir Consulting(株)共同経営者/COO兼FIDIA社長室室長)も紹介しているのですが、岡田さんもデロイト時代に一緒に働いた中で一番優秀だと思った人です。
同じく僕が紹介した高橋さん(現・FIDIA取締役)も、僕が知っている金融業界の人の中で一番優秀だと思っている人です。
この人たちがどれだけ優秀か、どれだけすごい実績やエピソードを持っているかについては、森さんの魂の書『スタートアップ芸人』を読んでもらえばわかるでしょう。

だから、僕の知る各コミュニティで一番優秀な人を引っ張ってきているというのは、そのとおりです。ただ、「優秀だから紹介しました」というのとちょっと違います。
自分が「この人すごい!」と思う人とは、自然と縁が繋がるじゃないですか。
相手をリスペクトしているからこそ、コミュニティを離れてもずっと連絡を取ったりしますし、話が聞きたいからちょくちょく会ったりもする。
信頼できる人だからこそ、何かあったときに連絡したり、相談に乗ってもらったりもする。
普段からそういう関係を築いているから、森さんから話があったときにすぐに頭に浮かんで、すぐ声をかけられたんです。

――普段の関係性が大事なんですね。

中川:はい。中嶋もそうですし、岡田さんもそうです。
岡田さんとはデロイト時代に一緒に働いていて、僕が先にデロイトを辞めて独立したんですが、独立後も個人的によく会って話していたんです。
そこで僕はずっと岡田さんに、「早く会社を辞めたほうがいいっすよ」と何度もそそのかしていたんです。
デロイトという会社に問題があるとかではなく、「岡田さん、あなたは組織に属すのは嫌いでしょう」と、適性の話をしていたんです。

岡田さんは独立したほうが絶対にいいと思っていたので。
「決まった時間に出社するとか、決められた会に出席するとか、そういうの嫌いでしょ?」「上の人から何か言われるの嫌いでしょ?」「組織にいるの窮屈でしょ?」「もっと自由な世界ありますよ」と、ずっと言い続けていたら、岡田さんが本当に独立することになった。じゃあ、一緒にやりましょうと、諸手でお迎えしたわけです。

――人間性までわかっている親しい相手だからこそのすごい勧誘ですね!

中川:岡田さんが変わり者なのは本当のことですから(笑)。
それに岡田さんも「組織になじめない中川が、この会社では楽しそうに仕事をしている」と、FIDIAを気にしてくれていた。そこから一緒にやるようになって、今は僕と一緒にFIDIAの社長室室長兼Luvir Consultingの共同経営者をやっています。

このあたりの面白い話や、岡田さんがどんな条件でFIDIAに入ったのかなどの詳細は、森さんの『スタートアップ芸人』を読んでもらえればと思います(笑)。