実際、議員サービスは、当時の社会民主党の党首ホーカン・ユーホルト氏に警告しようとした。彼が本当にマンションでパートナーと一緒に住んでいたのなら、ユーホルト氏は賃料の全額を還付請求することはできなかった。ガールフレンドが一緒に住むなら、賃料の半分を払わなければならない。

「ユーホルト氏の側近の一人に連絡したんですが、彼は全額還付請求を続けました。ジャーナリストがここに来て、嗅ぎつけました。そして、ユーホルト氏はスキャンダルにさらされたんです」と、アスペグレン氏が当時を振り返った。

 どうやら、「窃盗」の機会はほとんどないようだ。スウェーデンの国会議員は、集会を催したり、高級レストランでの食事を経費で落としたりすることができないようだ。

「まったくあり得ませんよ」と、アスペグレン氏が椅子に座ったまま言った。ただ、議長になると別で、外国からの賓客や大使との夕食会など、裁量で使える年次経費がある。2013年のこの経費の予算は112万クローナ(約1232万円)だった。

 外国へ出張する際、航空券やホテルの請求書が議会の「旅行サービス」から直接「議員サービス」に送られる。支払いをする前に「議員サービス」の職員が受け取ったデータを厳密にチェックし、議員が提出した出張報告と照らし合わせる形で確認をしている。

「高額の請求書はあまりありませんね。議員がお金を使えるものはそんなに多くはありませんから。 また、出張の場合、請求書を偽造することはできません。航空券やホテルは議会の旅行会社が予約しますから」と、アスペグレン氏は言う。