現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。
健康とは「逆境への適応能力」である
エネルギー容量が健康の基盤であると正しく理解するために、「健康」には実際何が必要かをより詳しく見ていきたい。
1948年、世界保健機関(WHO)は、健康を「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義した。
ハードルが高く、まったく非現実的な定義だ。なぜなら、人間はウイルスに感染したり、身体の一部に不調をきたしたり、たいていは加齢に伴い衰えを経験するものである。特に活発に生きている人ほどそうなりがちだ。
あなたは次のどちらの人がより健康的だと思うだろうか?
サラダばかり食べて、リスクをいっさい冒さずに、一日中椅子に座っている人が健康的なのだろうか?
それとも、山に登り、ダイビングをし、世界中を旅して回り、それゆえに疲労骨折や腱断裂に見舞われたり、時折たちの悪いウイルスに感染したりする人が健康的なのだろうか?
健康とは何かを理解するために、「あなた自身にとっての健康とは何か」を考えてみてほしい。
あなたは自らのエネルギーをどう使いたいだろうか?
あなたは自分の人生から何を得たいだろうか?
あなたが価値を置くのは、安全と冒険のどちらだろうか? 黙想にふける人生と危険と隣り合わせの人生のどちらだろうか?
こうした個々人の健康の捉え方を踏まえると、私が今まで見た中で最も適切かつ正確だと思う健康に関する説明は、マフトルド・ヒューバーが2011年に提唱した「社会的、身体的、感情的な問題に直面したときに適応し、本人主導で管理する能力」という健康の定義だ。
これは、私の健康の定義である「逆境への適応能力」にも通じる。
私たちは人生で絶えず難題にぶつかる。こうした難題への対処と適応の仕方こそ、健康の真の指標となる。
私たちの健康は、主要なストレッサーを処理する能力と、すぐに立ち直り元気を保つために感情的・身体的・精神的・社会的なリソースを整える能力によって測られる。
しかし、残念ながら、あまりに多くの人々が既に心身衰弱への道をたどっている。こうした人たちは逆境に適応できていない。もしあなたが慢性疾患を患っているなら、あなたは適応できていない。常に疲れているなら、あなたは適応できていない。
食べすぎや睡眠不足、働きすぎや低いパフォーマンス、ストレス過多や運動不足、孤立やソーシャルメディアへの執着、カフェインや喫煙への依存、そしてアルコールや薬物による自己治療〔心理的苦痛から逃れるためのアルコールや薬物への依存〕をやめられないなら、あなたはやはり適応できていないのだ。
(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)