「2:6:2の法則」をご存じだろうか。これは、組織というものは「優秀な成績を収める2割のメンバー」「普通の成績を収める6割のメンバー」「成績の悪い2割のメンバー」に分かれる傾向が強いというものだ。東北楽天ゴールデンイーグルス社長として「日本一」と「収益拡大」を達成し、現在は、宮城県塩釜市の廻鮮寿司「塩釜港」の社長にして、日本企業成長支援ファンド「PROSPER」の代表として活躍中の立花陽三氏は、初著書である『リーダーは偉くない。』の中で、「『以前は下位2割のメンバーを入れ替えるしかない』と思い詰めていたが、今となっては間違いだったと思う」と語る。考えを改めた立花氏は一体どういった対応を取ったのか。本記事では、本書の内容をもとに、成果を出せない人たちへの対応について紹介する。(構成:神代裕子)
成績の悪いメンバーを切り捨てるか否か
成果を出せない社員をどうするか。
これは、経営者やリーダー的ポジションにいる人であれば、一度は悩んだことがあるはずだ。
同じように指導したとしても、できる人とできない人は出てきてしまう。
組織においてその割合は、「優秀な成績を収める2割のメンバー」「普通の成績を収める6割のメンバー」「成績の悪い2割のメンバー」に分かれる傾向にあると言われている。
これを「2:6:2の法則」と言い、「働き蟻の法則」とも呼ばれる。
ここで問題になるのは、一定数現れる「成績の悪い2割のメンバー」だ。
リーダーの中には、彼らを育てようとしたりせずに、「新しい人に入れ替えてしまえばいい」と思う人もいるだろう。
本書の著者である立花陽三氏も、楽天や球団の監督になる以前は、外資系企業で働いており、「『下位2割』は入れ替えるのが正義だ」と思い込んでいたそうだ。
しかし、ウォール街において、最高級の賛辞を持って讃えられるマネージャーを見ているうちに、それは間違いだと気がついたという。
なぜなら彼らは、単に「下位2割」を切り捨てるだけの「冷酷」な人物ではなかったからだ。
有能なマネージャーは下位2割を切り捨てない
非常に周囲からの評価が高いマネージャーたちは、部下のことを大切に考える、「人望」のある人物だったそうだ。
もちろん、そのような努力を重ねても、どうしても結果が出ない場合には、「人を入れ替える」という決断もします。しかし、その最終判断に至るまでには、丁寧なコミュニケーションを重ねて、人間同士の信頼関係を築く努力を怠らないのが、本当に優秀なマネージャーのあり方だったのです。(P.98-99)
このことに気づいた立花氏は、次のような「考え方」を徹底しようと決めたという。
成果の出せない部下のことを信じることができるか。そして、能力を発揮してもらえるように導けるか。それができるかどうかでリーダーとしての資質が問われるということなのだろう。
チャンスを提供し、やる気を取り戻させる
しかし、日々忙しい業務の中で、どこまで「下位2割」の人たちの育成に時間をかけられるかというと、なかなか難しいのではないだろうか。
同じ指導で成果を出せる人が一定いる以上、できない人にばかり手厚い指導をするわけにもいかない。
立花氏も、「『2:6:2』の『下位2割』に手をかけ過ぎて、『上位2割』『中位6割』のケアに手が回らないのは本末転倒」と注意喚起する。
そこで、立花氏が勧めるのは次のような方法だ。
こういった取り組みをすることで、何人もの社員が、見違えるように溌剌と「能力」を発揮するようになったそうだ。
部下のやる気を引き出す方法を考えよう
「下位2割」の人の中には、成果を出せないことに心苦しさや悔しさを感じている人も少なくないだろう。
「チャンスが与えられれば自分だって……!」と思っている人もいるはずだ。
「下位2割」を切り捨ててしまうことは簡単なのかもしれないが、「2:6:2の法則」がある以上、また「下位2割」は必ず現れる。
そう考えると、切り捨てるのではなく、どうすればやる気になり、成果を出せるようになるかを検討するほうが建設的と言えるのではないだろうか。
立花氏自身、下位2割の人たちが会社に欠かせない人材に成長していく姿を見て、「僕自身が人間として、リーダーとして、成長させていただけたのだと思います」と語る。部下の成長はリーダーの成長でもあるのだ。
本書には、メンバーの「やる気」に火をつける方法がいくつも紹介されている。ぜひ参考にして、できることから試してみていただきたい。