「旧皇族養子案」は
現実的で妥当性が高い妙案

 そこで、現皇族と旧宮家男子の個別の合意という形で柔軟に対処するのが、政府の有識者会議が提案した「旧皇族養子案」であり、大変現実的で妥当性が高い妙案である。

 養子を取れるのは、常陸宮殿下や妃殿下たち、それに三笠宮家や高円宮家の王女たちであって、両陛下は除かれるし、秋篠宮皇嗣家はボーダーラインだ。

 ただ、常陸宮殿下がお元気なうちに養子を取っていただくと説得力が高いし、その場合には、殿下の姉の子孫である東久邇家が浮上するかもしれない。国民感情や上皇陛下などのお気持ちとしても、昭和天皇の血筋が維持できることは好ましいことだ。

 一方、特定の宮家だけが対象というのでは、皇室関係者から広い理解を得にくいため、複数の旧宮家から選ばれるのでないか。「旧宮家の男子と愛子さまや佳子さまを結婚させては」という人もいるが、近親結婚は良くないし、本人たちの選択も狭めるので、私は否定的だ。

 当事者同士に任せると適切な人選ができるか心配だというなら、皇室会議の了承を必要とすればいい。複数の縁組をする場合は、同時にでなく、養子候補者の年齢などを考慮して順次でいい。養子の年齢は20歳前後が本人の意向確認もできて最適かと思う。

 伏見宮系については、室町時代中期の後花園天皇の弟の子孫にすぎないため、現皇室からは遠すぎるという人もいる。しかし、江戸時代の光格天皇即位時には、邦家親王の父親である伏見宮貞敬親王も有力候補だったし、仁孝、孝明、明治、大正と成人した皇子が1人ずつだった時期にも、1913年に断絶した有栖川宮家と並んで伏見宮家からの皇位継承は常に検討対象だった。

「果たして養子の希望者はいるのか」とか「希望する人は厚かましい」とかいう人もいるが、旧宮家の最大公約数的意見は、「自分たちから手を挙げるべきことでないが、お声がかかれば、できるだけお受けするのが自分たちの義務だ」である。

 かつて小泉内閣のときに、旧皇族が急に話題になり始めたので、旧皇族には戸惑う人が多く、中にはネガティブな感想を口した人もいた。だが、その後、関係者の間で意見交換もされているし、子育てなどもその可能性も念頭に置いてしている人が多い。

 また、目的が悠仁さまの後が続かないときの備えであるとすれば、悠仁さまとの年齢差なども考慮すべき要素である。皇族の養子になった人が天皇となることには抵抗もあろうが、問題になるのは悠仁さまの次の世代以降なので養子本人でないし、その子や孫は生まれながらの皇族である。

 悠仁さまに後継者がいない場合、悠仁さまが、上皇陛下が退位されたのと同じ年齢に達せられるのが2090年頃なので、その20年前ぐらいには皇嗣殿下を決める必要があるだろう。

 そのころになれば、適切な継承候補がおのずから明らかになってくるだろうし、その人選においては、現在の好感度など関係ないことだ。また、男系派は嫌がるだろうが、そのときに、悠仁さまの女子、および愛子さまや佳子さまの子孫も候補になる可能性を、今の段階で排除する必要はまったくない。

(評論家 八幡和郎)