YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で、メンタルの病気について発信し続けている、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介氏。インタビュー第1回では、益田氏が精神科医の道に進んだ経緯を聞いた。本記事では、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念して、最近増えているメンタル不調の相談、そして安楽死の問題について話を聞いていく。【第1回の記事はコチラ】
宗教2世問題、幼少期の性加害……、虐待やトラウマの相談が増えたワケ
――患者さんはどのような症状で受診される方が多いのでしょうか
益田裕介(以下、益田) 症状として最近多いのは、発達障害グレーゾーンと、最近では虐待関連が増えています。来院される方は特に30代が多いです。40代は3割ぐらい。患者さんの7割ぐらいは僕より年下で、比較的若い方が多いですね。
――虐待関連の相談が増えているのはなぜなのでしょうか?
益田 安倍元首相の事件があってから、宗教2世の問題が取り上げられるようになりました。そこから宗教2世の方による虐待やトラウマに関する相談が増えました。ジャニーズ事務所での性加害問題があってからは、性的な虐待で相談に来られる方が増えています。YouTubeで取り上げた影響もあってか、「こんなこと相談していいんだ」という感じで思われたのかもしれません。
みんな比較の中でしか、自分をはかれないようになっている
――過去のつらい記憶に対して、どのような治療を行うのでしょうか?
益田 基本的には、「問題の整理」と「明確化」を続けるイメージで治療を行っています。うつ病を主訴で来るけど、話を聞いてみると虐待をされた経験がトラウマになっていたり、そういうケースが多いんです。また、安楽死の話題も増えてきている気がします。増えてるというか、患者さん側も含めてそれを考えることが増えてるのかもしれませんね。
――確かに、安楽死の話は最近よく目にする気がします
益田 安楽死って、究極の受け身だと思うんです。幸せになれないんだったら自殺する権利があるでしょというような。一方で、「ではどんな状態になれば、あなたは幸せと感じられるの? 苦しくても生きていこうと思えるの?」と聞いても、きちんと答えられる人は少ないです。お金があればいい、外見が良ければいい、能力や才能があればいい、人気があればいい、友達がいればいい、みたいな答えもちらほら。
――どんな状態が幸せか、というのは意外と考えたことがない人が多いかもしれません
益田 安楽死という絶対的なものを選ぼうとしているのに、他者との相対的な比較において、自分の運命を嘆いている人が、僕の臨床では多かったです。そして、SNSの影響で、本当に世界観そのものが貧困化している。みんな他社との比較の中でしか自分をはかれないようになっているのかなとも思います。