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インキュベーションの虚と実

世界から熱い視線を注がれる500 Startups
起業家を成功に導く文化と手法とは何か【前編】

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第24回】 2013年4月8日
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ネットワークの効用については
5年経てば見方も変わるだろう

500の産みの親、デイブ・マクルーア氏

 そして、最後に500の産みの親であり、冒頭で紹介したように橋下徹・大阪市長からラブコールを受けている、デイブ・マクルーア(Dave McClure)だ。500の特徴を表しているコメントを列挙してみよう。

 「二年余りで400社以上に投資したが、よい結果が出ている。投資先企業の質はよい。アクセラレーター・プログラム経由での投資と、そうではない一般のシード投資の件数は、だいたい1対3だ。独自の投資基準を設けている。例えば Instagramのように売上ゼロの事業には投資しないなどだ。われわれはどのような投資家を目指すかについては、野球選手の例えで、バリー・ボンズでなくイチローを目指すと言っている。従来型のベンチャー・キャピタルは、billion dollar exit(時価総額一千億円以上での株式売却)のホームランを追い求めるが、我々は違う。でも、イチローも長打やホームランも打つけどね」

 「我々のように少額投資の投資家にとっては、ネットワーク効果がとても大きい。いままでの経験でもそれが強く認められる。それによって、よいディールにありつける。多数の会社に投資することで、素晴らしい会社と巡り合うことも増える。こうした戦略をとっているのは、まだ10社もない。しかし、セコイア・キャピタルのように、間接的にこのアプローチをとろうとしている大手投資家も現れている」

 「ちなみに、我々はYコンビネーターと競っているようで、共存共栄している。結果的に、Yコンビネーターが投資した会社に最も多く投資しているのが500となっている。Yコンビネーターも500もそれぞれ特徴があり、スタートアップが得られるものは同じではない。いったんYコンビネーターのプログラムを経て投資を受けたスタートアップでも、500のメンター・ネットワークやコミュニティに魅力を感じて、500に出資を仰いでファミリーの一員になりたいと思う会社は少なくない。また、例えば国際展開やデザイン/UXについては、500の方がよりスタートアップの役に立つことができる」

 「トップダウンのビジョンや計画は、うまくはいかないと思っているから、500は(やってみて修正する)reactive 戦略であり、ブランドづくりもorganic way(自然につくりあげられる)だ。我々がやっていることが理解できないとか、批判する人もいるが、新しい試みにはつきものだ。5年経てば見方も変わるだろう」

 「従来型のベンチャー・キャピタルがどうみているかには興味がないが、起業家や我々への投資家がどうみているかについては考える必要がある。これについては、我々のメッセージを発信する努力をしている。起業家には始終話題にしてもらっているし、毎日メディアに取り上げられている。一日で記事10本も珍しくない」

 これらの発言から分かることは、マクルーア氏は、単にスタートアップへの投資会社を始めたのではなく、「500 Startups」というスタートアップを始めたという意識を持っているということだ。だから、当初は「成功するかどうかは誰にも分からない」とも言っていた。

 従来からある投資事業モデルを繰り返すのでなく、そのものを革新しようという企てなのだ。だからこそ、他のスタートアップと同様に、二年余りの結果とトラクション(traction=引っ張る力)に対する自信が確信となり、さらなる挑戦へと進んでいるのだ。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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