声に出すとより記憶に残る

 覚えにくい内容や難しい内容の場合、声に出しながら 書くようにします。これは、ある情報をただ黙読するよりも、書き出したり、ブツブツつぶやいたり、声に出したりしたほうが記憶に残ることが知られていてプロダクション効果(Production effect)と呼ばれています。

 過去の研究では、主に情報の入力段階において効果が調べられていますが、僕は最初に覚えようとする段階(最初に情報を読んでいる段階)、そして思い出そうとする段階の両方で使うことがあります。

 さらに、誰かに教えているフリをしながら、アウトプットすると、より効果は高いと思います。「Learning by teaching(教えることで学ぶ)」、「Teaching is learning(教えることは学ぶことである)」とよく言われるように、誰かに教えることは、実際に情報の整理や記憶の定着を促す効果が確かめられています。

 誰かに教える、または教えようとすることで、その学習内容の理解が深まることをプロテジェ効果(Protege effect)と言います。興味深いことに、実際に誰かに教えなくても、あとで誰かに教えることを前提に勉強すると、学習効果が高まるという研究報告があります。よく成績の良い生徒が他の生徒に教える光景を見ることがあるかもしれませんが、実はより効果の高い学習をしているのは「教えている側」なのです。

「なんとなく嫌だなぁ」に負けず、頑張る

 白い紙に、汚い字で書きなぐりながら、誰もいないのに声を出して、教えているフリをしている僕のことを知らない人が見たら変な人だと思うかもしれません。

 でも、いいのです。これが必死に脳の神経回路の結びつきを強くしようとしている人間の姿なのです。自分が覚えているかを試すアクティブリコールは、脳に負荷がかかると感じたり、自分がどれほど覚えていないかがわかって悲しくなったりしてしまうかもしれません。「今読んだばかりなのに、なんで自分はこんなに覚えていないんだ!」と思うことはよくあります。「なんとなく嫌だなぁ」という感じがあり、あまり気が乗らないかもしれません。さらに、研究の参加者がまさにそうであったように、やった直後は効果が感じにくいかもしれません。