ソフトバンクGが3年連続の最終赤字…孫正義の決算会見「不在」はサブマリン戦法か?孫正義氏はここ数年、決算会見の場からは姿を消している Photo:NurPhoto / getty images

ソフトバンクグループの2024年3月期決算は、3連続の最終赤字に沈みました。一方で、「過去最高」をたたき出した数字もあります。グループの本質的な価値が最大化したにもかかわらず、孫氏は今回も決算発表には登壇しませんでした。なぜなのでしょうか? (トライズ代表 三木雄信)

「時価純資産」が27.8兆円で過去最高

 ソフトバンクグループが5月13日に発表した2024年3月期決算は、売上高が6兆7565億円(前年同期比2.8%増)、当期純利益が2276億円の赤字でした。

 3年連続の最終赤字に沈んだとはいえ、前期(23年3月期)に計上した9701億円の最終赤字からは改善したこと、四半期ベースで追うと23年10~12月期は9500億円の当期純利益を出したのに続き、24年1~3月期は2311億円の最終黒字を確保しており、業績が回復傾向にあることからでしょうか。決算会見に登壇した後藤芳光CFOは、「順調に成長した1年だった」と自己評価しました。

 一方、ドル建ての負債が円安の影響をもろに受け、為替差損として7031億円の損失を計上してもいます。

 そうした中、後藤CFOが最も強調していたKPIが、Net Asset Value(時価純資産)でした。ざっくり言うとこれは、ソフトバンクグループ単体で考えた場合の、保有株式の時価総額から有利子負債を引いた数値です(厳密には必要なテクニカルな修正が行われています)。

 そして今回の決算では、このNAVが「27.8兆円で過去最高」の水準に達したと明らかにしました。

 このNAVを重視する経営手法は、1998年に筆者がソフトバンクに入社した時から変わっていません。ソフトバンク創業者の孫正義氏は当時から、自身の経営成績を示す指標としてNAVを見ていました。孫氏は、NAVが過去最大になったことは、損益が改善したことよりはるかに意味があると考えているのです。

 NAVの最大化は、言い換えれば、ソフトバンクグループの本質的な価値の最大化です。ところが、孫氏は今回も決算発表には登壇しませんでした。孫氏はここ数年、決算会見の場から姿を消しています。なぜ、NAVが過去最高になっても孫氏は表に出てこないのか。どのような理由があるのでしょうか?