10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。天才を生み出すそのユニークな教育メソッドを、塾長の田邉亨氏が初公開した書籍『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)が、このたび発売になった。本書を抜粋しながら、家庭にも取り入れられるそのノウハウを紹介する。

小さいときは才能豊かだった子が失速する2つの理由Photo: Adobe Stock

子どもはみんな才能のかたまりなのに…

 私は、子どもはみんな才能のかたまりだと思っています。なぜなら、素直だから。
素直で、受け入れる力が大きいほど、その後の伸びも大きくなります。

 ところが、実際には子どもが全員、天才に育つわけではありません。素直で無限の伸びしろを持っていたはずの子どもが、いつの間にか伸びしろがポキンと折れて、低空飛行を強いられてしまうのです。

 主な原因は2つあります。
 ①子どもに苦手克服を強いる
 ②先取り学習をさせない

「早生まれ」の影響も見過ごせない

 まず①について。
 子どもに苦手なことがあると、親は「しっかり教えてあげなくては」と思いますよね。落ちこぼれないように、苦手を克服させなければいけないと。その気持ちはよくわかりますが、苦手なことばかりやらされると子どもはいじけてしまいます。萎縮して、本来伸びるはずの能力までもが伸びなくなってしまうことが多いのです。

 特に低学年のうちは、早生まれの影響を大きく受けます。単純に、まだそれを理解するだけの能力が備わっていないことがあるのです。20年以上にわたり、たくさんの子どもたちを見てきましたが、この子があと半年遅れてスタートしたら、すくすく伸びたんだろうなというケースがたくさんありました。

 だから、苦手なことを強いて、勉強嫌いにするのは避けたいところ。その子の能力を丁寧に見極めながら、その都度、成長に見合った適切な学びを提供していくことが理想です。これが、「先生」「指導者」の重要な仕事です。

 ②に関しては、本当にもったいないと感じています。
 多くの塾では、学年別に授業を行っています。そのため、成長速度が速い子で、例えば今は小4だけど、小5のクラスに入れたいとなっても、塾は受け入れてくれません。もちろん、そんなことをしていたら、小5のクラスが定員オーバーになってしまうからという事情はあります。

 しかしそれ以上に、実は裏の事情が働いているケースがあるのです。

 それは、飛び級をさせてしまったら、最後の6年生のときに来てくれなくなって月謝を取りっぱぐれてしまうということ。

 商売だから仕方がない面はありますが、子どもの能力を最大限伸ばすという意味では、非常にもったいないと言わざるをえません。成長する余地が多分にある幼い時代に、大人の事情で天井を設けて、伸びを妨げることになりかねないからです。

 本来、子どもは才能のかたまり。勉強するのが大好き

 だから、りんご塾では学年のしばりを設けずに、その子の能力に合ったことを教えています。そうすると、先取り学習をすることになる子がほとんどです。

 本来、子どもはみんな才能のかたまりだし、勉強するのが好きです。

 だから、早く、素直なうちに、成長する余地だらけのうちに、正しく楽しく学びをスタートすることが大切なのです。

*本記事は、『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(田邉亨著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。