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3月29日に昨年度の最終取引日を迎えた東京株式市場。日経平均株価は1年間で23%上昇し、リーマンショック前の2007年度末とほぼ同水準まで回復した。
「株は怖い」──。そう口では言いながら、この誰も予期しなかった株高に笑いが止まらないのが、株式を大量保有する保険業界だ。大手生損保だけで、計7兆円に迫る株式含み益がもたらされたからだ。
とりわけ“棚ボタ”が大きかったのは日本生命保険だ。他の大手生損保、例えば、東京海上日動火災保険が1兆3000億円程度、明治安田生命保険が1兆1300億円の含み益なのに対し、日本生命だけが2兆1300億円と、頭一つ抜け出している。
さかのぼること半年前。逆に、日本生命は低迷する株式市場に最も苦しみあえいでいた。中間決算では3479億円という巨額の評価損を計上。これは、他の大手生保のそれを合わせた額より1200億円以上も多かった。
背景にあるのは、業界の流れに逆行した日本生命の高い株式保有額。株式などのリスクを厳しく見積もる新しいソルベンシー・マージン規制の導入で、他の大手生保が、この5年で保有株式を簿価で5~7割まで削減する中、日本生命だけがほぼ横ばいで持ち続けている。
「日本生命ほどの体力があれば、当然、株も持ちたい」とライバル生保はうらやむが、半年前には当の日本生命も「苦しいピッチング」(日本生命幹部)と嘆いていた。
ただ、しょせん株は水物。しかも今後、より厳しいソルベン規制導入が予見される中、株式保有を続けることのデメリットも顕在化する。日本生命には、痛し痒しの状況が続く。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)