「新政権の“大人の事情”ではないのか」(大手生命保険幹部)
金融庁が新年早々、生命保険各社の予定利率を左右する「標準利率」の算出方法の見直しに着手したことが明らかとなり、業界にさまざまな憶測を呼んでいる。
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なぜなら、10年国債の過去の平均利回りを基に算出される標準利率は昨年10月に、現行の1.5%から1%へと12年ぶりの引き下げが決まったばかり。生保各社が来年度、保険料の値上げに踏み切ることは確実視されていたからだ。
複数の業界関係者によれば、昨年11月、生保業界側が標準利率の算出方法の変更を求める申し入れを金融庁に行ったことが、事の発端だった。
「業界では以前から、10年国債のみの利回りを基に算出する現行の計算式を、もっと複合的な要因を反映したものに変えるべきとの声が強かった」と大手生保幹部。
計算式が改められることで、来年度に値上がりする保険料が、再来年度は一転して、値下がりする可能性さえ取り沙汰されている。だが、「値上げした翌年に値下がりするならば、来年度は保険が全く売れなくなる。そんな見直しはあり得ないし、具体的な改定案は全くの白紙」と金融庁。
一方、業界からは「現行利率よりも大幅に上がれば、今度は逆ザヤに陥りかねない」(別の大手生保幹部)という懸念も指摘されるものの、「見直しそのものは歓迎」(前出の大手生保幹部)との声が大きい。
だが、突如として浮上した見直し議論に、業界ではあるうがった観測も広がっている。それは、昨年末に誕生した安倍新政権の影響だ。
目下、標準利率の新しい算出方法の一つに、20年や30年物の超長期国債を基にする案が出ているという。新政権の積極財政に伴う超長期国債の増発が確実視される中、「その引き受け手として、生保業界に白羽の矢が立てられたのではないか」(前出の大手生保幹部)というわけだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)