運転するシニア写真はイメージです Photo:PIXTA

「コレステロールの高い食事は避けよ」と医者は言い、「そろそろ免許返納したほうがいいんじゃないの?」と家族は言う。しかし、高齢者を気遣ってかけられる言葉を鵜呑みにしてやりたいことを我慢するのは、いい余生を送ることへとつながるのだろうか?本稿は、和田秀樹『老いたら好きに生きる 健康で幸せなトシヨリなるために続けること、始めること、やめること』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

好きなものを我慢しない
食欲があることは幸せの証し

 コレステロールや塩分など、高齢者に限らず健康のために摂りすぎないよう気をつけている人はいるでしょう。しかし、コレステロールは男性ホルモンの材料になるもの。摂取量が減ってしまえば、意欲の低下や記憶力の衰えなどにつながります。高齢者はとくに注意です。

「コレステロール値が高いので、脂っこい食事は控えたほうがいいですね」

 大抵の医師はそう言いますが、その言葉を鵜呑みにして、好きなものや美味しいものを我慢していたら、人生の楽しみが半減してしまいます。

 私は人に幸福感をもたらしてくれるものの中で、美味しい食事はかなり上位に入ると信じています。たとえ、100歳まで生きるとしても、70歳、80歳と年齢を重ねていけば、残された食事回数はどんどん減っていきます。少ない回数なら、好きなものを食べたほうがいいに決まっています。食べたいもののことを思い浮かべて、お腹が空いてくるというのは元気な証拠ですし、食欲があるというのは幸せなことです。

 それなのに、血圧を下げようとして塩分の少ない薄味のものばかり食べる羽目になったらどうでしょう。果たしてそれは幸せといえるのでしょうか。

 医師が血圧や血糖値、コレステロール値などに注意を払うのは動脈硬化などの血管障害を予防するためです。脳梗塞や心筋梗塞は動脈硬化が原因で起こりますので、医師の立場では言わざるを得ないのかもしれません。

 ただし、血管は年をとれば誰でも硬くなります。心配なら、同時に血液をサラサラにするといわれる食材を多めに摂る、水分を多めに摂る、運動を欠かさないなど、必要な予防策をとればいいだけです。それすら行わず、コレステロールだけを危険視するのは間違いです。

 高齢者にとってコレステロールは不可欠なものですので、罪悪感など持たず美味しく食べていいのです。

車の運転はできる範囲で続けて
自信がなくなればやめたらいい

 高齢者が高速道路で逆走したり、交差点や駐車場でブレーキとアクセルの踏み間違いをしたりなどの事故を起こせば、マスコミは大きく報道します。そのたびに、高齢者の運転は危険だ、運転免許は返納すべきだとの声が高まります。