「ミスター私物化」
4月、地元・大阪で一部勢力から、そう揶揄されていた日本医師会幹部がいる。府医師会関係者に送られた文書にはこうある。
「ミスター私物化は、自身が府医会長に後継指名したうえに会務運営上何ら落ち度のない高井(康之)会長に、あの手この手で有力者らも使い執拗に降板を迫りました」
これを読めば、ミスター私物化は、日医ナンバー2の茂松茂人副会長であることがわかる。茂松氏は22年、府医会長から日医副会長に転じた際、府医会長のバトンを当時副会長だった高井氏に託した。
だが、高井氏が府医関係者に宛てて発出した文書によると「23年夏頃から、茂松氏の意向を汲むさまざまな方々から府医事務局(パワハラ疑惑など)の問題を理由に、次期府医会長選出馬を断念するよう申し入れられた」という。
一方で、茂松氏は本誌にこう反論した。
「私としては、すべて段取りをして高井氏に大阪の会長を引き継いでもらったが、役員や事務局とのコミュニケーション不足があり、高井氏が孤立してしまった」
こうした経緯により、府医副会長の中尾正俊氏が高井氏の対抗馬に浮上。茂松氏は中尾氏支持に回り、票集めに奔走した。その結果、5月19日の府医会長選では、中尾氏が193票を獲得し、49票だった高井氏を大差で退けた。茂松氏が次期も日医副会長を続投するにあたっての不安材料は解消されたことになるが、茂松氏の手法を疑問視する声は少なくない。