今年4月、兵庫県の姫路獨協大学が薬学部の2025年度以降の学生募集の停止を発表した。同大学に続く、淘汰リスクの高い薬学部はどこか。特集『薬局・薬剤師 サバイバルダンス』(全24回)の#10では、史上初めて、財務指標を加味した全国56私立大学薬学部「淘汰危険度」ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 竹田孝洋、野村聖子)
史上初の財務諸表を加味した
「全国56薬学部淘汰危険度ランキング」
6年制の導入以降、新設や定員増が行われてきた薬学部。特に私立大学での増加が顕著で、2006年に44大学45学部だったものが、今年4月には順天堂大学、国際医療福祉大学成田薬学部の2大学が加わり、59大学62学部になった。
近未来の人口減少、少子化は確定的だったにもかかわらず、際限なく新設や定員増を行えばどうなるかは明白だ。
まずは、薬剤師が余り始める。薬学部が増えれば当然輩出される薬剤師も増えるわけだが、人口は減少するのだから当然の帰結だ。実際、20年から始まった厚生労働省の有識者会議「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」で、45年には薬剤師が最大12万6000人過剰になるという推計が公表された。
その上少子化の影響により、主に私立大学で入学者が募集定員に満たない「定員割れ」の薬学部が続出した。
これを受けて、文部科学省は、一昨年8月に発表した「6年制課程における薬学部教育の質保証に関するとりまとめ」において、標準修業年限内(在学6年間)での卒業率・国家試験合格率が低く、学生が集まらない大学は、今後私学助成金の減額・不交付、つまり国によるお取りつぶしも辞さない構えを見せている。
そこで本誌編集部は、入学定員充足率、標準修業年限内での卒業率、国試合格率の三つの指標を用いて、全国の私立大薬学部の淘汰危険度ランキングを発表し、警鐘を鳴らしてきた。
そして今年4月、ついにその淘汰第1号が現れた。兵庫県の姫路獨協大学が、25年度以降の6年制薬学部の学生募集停止を発表したのだ。同大学は、過去3回の淘汰危険度ランキングで“3連覇”を達成しており、今回の募集停止について「兵庫県内ならびに近県薬学部との競争激化、18歳人口の減少や経済事情の著しい変化に伴い、徐々に入学定員を充足することが難しい状況となりました」と大学ホームページで説明している。
前回のランキング発表時には、3指標全ての数字が前年より悪化しており、「確実に淘汰の足音が近づいてきている」と報じたばかりだった。
やはり決定的だったのは、23年度の入学定員充足率だろう。何と定員の1割にも満たない8.3%を記録し、入学者はわずか5人。誰が見ても継続困難なのは明らかであり、多少遅過ぎる感は否めないが、今回の募集停止については賢明な判断といえるだろう。
「ポスト・姫路獨協」に最も近い薬学部はどこか。次ページでは、これまでの3指標に、史上初の財務指標を加えた新たな「全国56薬学部淘汰危険度ランキング」を大公開する。