『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という一冊の本が刊行される。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期の頃、おじいちゃんに教わった「人生の教訓」について書いたものである。そして実は、タイトルにある「おじいちゃん」とは、かの有名な「ガンジー」のことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは? 世界中の人々が「自分」と向き合うきっかけとなった本書の邦訳を記念して、その一部を特別に公開する。
「一人の時間」を大切にしていたガンジー
バプジ(「祖父」の意味)には、専任の広報担当やアドバイザーはいなかったので、自分の身は自分で守るしかなかった。それに当然ながら、大豪邸の中に隠れることもできない。だからバプジにとって、アシュラム(ガンジーが瞑想や修行をするための場所)は唯一、安心できる場所だった。
バプジならどこでも好きな場所にアシュラムを作ることができただろう。しかし、一人の時間をつくるために、あえて不便な場所を選んだのだ。バプジはさらに念を入れて、アシュラムの近くにバス停を作らないように、地元の政府にかけ合っていたほどだ。このアシュラムには、本当に大切な用がある人にしか来てほしくなかった。ただ有名なガンジーを見たいだけの人はお断りだったのだ。
私の祖父は、よくこんな冗談を言っていた。
「自分が一人になれる場所は二つしかない。アシュラムと、あとは刑務所の中だ」
バプジにとって、一人の時間は、心の平安を取り戻すための大切な時間だった。
「一人の時間」が成長を促す
一人の時間が必要なのは、なにも映画スターやマハトマ・ガンジーだけではない。私たちの誰もが、自分を取り戻すために、ときには孤独になる必要がある。忙しい現代に生きる私たちも、一人になれる場所を確保することが特に重要だ。
それは立派な場所でなくてもかまわない。自分の部屋で、まったくじゃまが入らずに一時間過ごすことができれば十分だ。または、ベッドに入った時間、日記を書く時間でもかまわない。
人間として成長したいのなら、自分の人生をふり返る時間や、瞑想する時間が必要だ。思索と内省の時間を過ごした後なら、他人にきちんと意識を向け、もっと深く、意義深い関係を築けるようになる。
(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)